大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

2021-01-01から1年間の記事一覧

スズメダイ類の産卵場所(その2)

岩の壁面を産卵場所に利用するのは、セダカスズメダイだ。繁殖期になるとメスを誘って約30cm四方の範囲に産卵させる。翌日その隣に別のメスを誘い産卵というのを連日繰り返す。そのため卵の発生に差が生じて異なった色になる。この壁面には6段階の卵が確認で…

スズメダイ類の産卵場所(その1)

9/26 のNHK「さわやか自然百景」は、和歌山 田辺の海。ハナイカの繁殖行動やハマフエフキの産卵など貴重なシーン満載だった。撮影はNHK和歌山。ただ残念だったのは、セダカスズメダイの卵保護シーン(右下)がコガネスズメダイと表記されたこと。通常は茶色…

狭いとこ大好き!(その2)

伊豆周辺の岩場にはカイメンが多い。特に筒状のザラカイメンがよく見られ、中に魚が入っている場合がある。このザラカイメンにはマツバスズメダイとイソカサゴが入っていて、とても窮屈な感じだ。 マツバスズメダイとイソカサゴ(富戸) ウツボ科のハナヒゲ…

狭いとこ大好き!(その1)

猫は狭くて窮屈なところが大好きだが、魚にも同じようなタイプがいる。ということで集めてみた。サンゴの隙間に暮らすカサゴ科のカスリフサカサゴは、全長約8cmにしかならない小型種。日本では琉球列島で見られるが、生息数は多くない。 ハナヤサイサンゴの…

泳ぎが不得手なサメたち

サメは泳ぎ続けなければ呼吸できずに死んでしまう、といわれている。確かにそのようなサメも多い。だが世界で400種以上いるサメの中には、泳ぐのが苦手なものもいるので、取り上げてみたい。まずはネコザメ科のネコザメ。千葉県および新潟県以南~九州、朝鮮…

マクロ写真の変遷

今やコンデジも接写機能付きで、誰でも簡単にクローズアップが撮れるようになった。写真を始めたころ(約60年前)からすると、驚異的な進歩だ。クローズアップとは、被写体を大きく写し出すことで、接写ともいい、70年代後半に一眼レフ用のマクロレンズが出…

アヤコショウダイの謎

アヤコショウダイは、イサキ科コショウダイ亜科コショウダイ属で、全長約60cmに達する。屋久島以南~琉球列島、西部太平洋、アンダマン海に分布している。同属の特徴は、幼魚と成魚の体色・斑紋が著しく異なること。成魚は背面に斜めの縞模様があること、胸…

体色も住みかも多様なアオサハギ

カワハギ科のアオサハギは全長10cmになるらしいが、出会うのは大半が5cm前後。神奈川県以南~長崎県の太平洋岸に分布する。岩礁域の付着生物のそばにいることが多い。体は丸みを帯び、腹部を少し膨らませることができる。体色・斑紋は生息環境に左右されるよ…

長年親しまれる美しい橋

ナショナルジオグラフィックのメルマガに「日本の百年」というシリーズがある。同誌が約100年前に日本を取材し、掲載した写真の中から1点選び、当時の思いを馳せる、というページ。直近は「美しくて強い橋」で、見たような橋が出ていた。解説には、JRお茶ノ…

日本では脇役・ロクセンフエダイ

フエダイ科のロクセンフエダイは全長約30cmになる。南日本以南の西部太平洋、インド洋に分布するが、温帯域ではあまり見られない。ヨスジフエダイにそっくりだが、体高がやや高く腹部まで黄色い。また水色のラインは5本あり、ゆえに英名は「ファイブライン・…

脱サラ40周年

サラリーマンを辞めて40年になる。カメラマンになるため辞めたのではなく、組織ならではの理不尽な面を多く見て嫌気がさし、後先考えずに飛び出したのだ。81年8月末が退職日だが、最後の1か月は残りの有給で座間味に行き、ダイビングしながら今後のことを考…

ハコフグについて

ハコフグ科のハコフグは全長約25cmになり、北海道以南~屋久島、朝鮮半島南部、香港に分布している。80年代初めまではミナミハコフグと混同されていたため、分布があやふやだった。現在は琉球列島にはいないことになっているが、詳しい調査が必要とのこと。…

こんにちは赤ちゃん顛末記

昔『マリンダイビング』に「こんにちは赤ちゃん」という連載があった。体色や模様が異なる親子の、赤ちゃんに視点を当てたもの。スタートしたのは86年1月号で、第1回目を任された。いろいろな方に交代で執筆を依頼する予定なので、見本となる文体を考えて書…

海のパワースポット(奄美編)

奄美南部のダイビングポイントの大部分は大島海峡にある。加計呂麻島との間の海域で、入江も多い。数あるポイントの中でパワースポットといえるのは三角岩だ。海岸の断崖が三角に見えることでこの名が付いた。大島海峡の東側の出口近くに位置し、複雑な地形…

海のパワースポット(沖縄編)

いつの世も人気なのがパワースポット。そこにいるだけで気持ちが上向きになる場所のことで、神社やお寺、山、岩など、歴史的価値があるところが多い。もちろん感じ方は人それぞれ。海にもある。海の場合は、気に入った写真が撮れたり、貴重な生態が見られた…

セダカハナアイゴについて

アイゴ科アイゴ属のセダカハナアイゴは全長約35cmになり、紀伊半島以南の琉球列島、小笠原諸島、ニューカレドニアに分布する。80年代終りごろまで近似種のハナアイゴとされていた。しかし、体高が高いタイプは別種らしいと研究され、学名未確定のまま「セダ…

駒形橋からの撮影のこだわり

NHKの朝ドラ「おかえりモネ」。都会生活を始めた主人公モネの下宿先は、街並みからすると勝鬨(かちどき)付近のようだ。身近な場所が舞台だと、違和感を覚えることも。上京したモネが、水上バスから東京スカイツリーを眺めるシーン。おのぼりさんが一人で水…

最も目立たないキンチャクダイ

キンチャクダイ科アブラヤッコ属のチャイロヤッコは全長約7cmで、和歌山県以南の西部太平洋、インド洋に分布している。同属は臆病で動きが素早いことが特徴。そのうえ本種は生息数が少ないので、なおのこと撮影するのは困難といえる。体の色は青みがかった黒…

「敗戦」の日に想う

一般的には「終戦」だが、人ごとと感じてしまうので、戒めを込めて「敗戦」とした。 近所の横網町公園内に「東京都慰霊堂」がある。関東大震災や東京大空襲で犠牲になった身元不明者を安置している。前を通るたびに、もしかしたら自分もここで…と思いを馳せ…

ダイバーには人気のイソマグロ

サバ科は、人気食用魚が多く集まるグループ。サバ属、マグロ属、カツオ属、サワラ属など日本に9属21種が知られている。その中でイソマグロ属だけがあまり食用にされない。図鑑にも「水っぽくて美味しいとはいえない」とある。マグロと付き、同じようなエサを…

警戒心ゼロのオオスジヒメジ

ヒメジ科は下アゴからのびる2本のヒゲが特徴。日本にはヒメジ属、アカヒメジ属、ウミヒゴイ属の3属25種が生息している。ウミヒゴイ属のオオスジヒメジは全長約60cmに達するが、出会うのは40~50cmが多い。千葉県以南の太平洋、インド洋に広く分布している。…

富士山テーマの写真展

緊急事態宣言中で不要不急の外出自粛にもかかわらず、写真展を見に六本木へ行った。「不要不急」は人によって受け取り方はさまざま。この外出は、心の病を防ぐため必要だったのだ。何ごとも自分たちに都合よい解釈をするアベ・スガ政権をまねただけ。 東京ミ…

若い世代に注目されるフィルムカメラ

フィルムカメラからデジタルカメラに移行し始めたのは2000年ごろ。当初画質が悪かったが、徐々に画素数も増えて進化し、今や電話機(スマホ)でも鮮明に撮れる時代になった。ところが、そんなデジカメを見捨て(?)フィルムカメラにハマる若い女性が増えている…

黄色いもん同士で…

キイロハギやヘラルドコガネヤッコのように、全身黄色い魚がいる。その一方で、他の体色なのだが、黄色いタイプが現れる魚種も意外に多い。ヘラヤガラやマルクチヒメジ、カマスベラなどで、黄色くなるタイプを黄化個体という。今回は別種にもかかわらず、黄…

8Kで取材の奄美の海 再放送

今月26日、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島が世界自然遺産に登録された。それに合わせ、2018年に8Kで奄美の海を取材した番組が、NHK BSプレミアムで再放送されることになった。 放送日時 8月3日(火)午前10時29分~11時29分 タイトル 8K「奄美の海 …

激レア! アデヤッコ幼魚発見!!

キンチャクダイ科は日本に7属32種分布している。同科はエラ蓋にトゲがあることが特徴で、チョウチョウウオ科にはないのが相違点。7属の中でサザナミヤッコ属は40cm前後になる大型のグループで、幼魚と成魚の体色・斑紋が著しく異なり、幼魚は紺色の地に白の…

インドネシアへの思い(コモド編)

コモド諸島の玄関口はフローレス島のラブハンバジョー。バリからジェット機で約60分のところ(プロペラ機の場合+20分)。港からダイビングボートでコモド諸島へ向かう。最初にコモドダイブクルーズをしたのは08年9月。緑がない岩の島には生きものの気配は感…

インドネシアへの思い(ラジャ編)

新型コロナウィルスの感染者数が増えている東京だが、それより深刻なのがタイやインドネシア、マレーシアなどの東南アジアだ。中でもインドネシアでは毎年ダイブクルーズをしていたものの、昨年から中止になっている。一刻も早く元に戻ってほしいという願い…

ダイビング誌の灯が消えた!

超ビックリニュースが飛び込んできた。ダイビング雑誌の『マリンダイビング』や「マリンダイビングフェア」でおなじみの(株)水中造形センターが破産したという。当センターは、1958年に水中写真家・舘石昭氏(故人)が設立したプロダクションで、1969年に…

柏島・初潜りから30年

高知県柏島は、交通の便はよくないにもかかわらず、多くのダイバーが訪れる。黒潮や地形的な関係で、レアな魚類が豊富だからだ。柏島で初めて潜ったのは91年7月なので、ちょうど30年前。宇和島在住のHさんと知り合ったのがきっかけ。毎週柏島に通っているHさ…