大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

海のパワースポット(沖縄編)

いつの世も人気なのがパワースポット。そこにいるだけで気持ちが上向きになる場所のことで、神社やお寺、山、岩など、歴史的価値があるところが多い。もちろん感じ方は人それぞれ。海にもある。海の場合は、気に入った写真が撮れたり、貴重な生態が見られたりするポイントで、かなり現実的。沖縄では慶良間諸島安室島(あむろじま)の南東にあるウフタマというポイントだ。サンゴ礁と砂地と根からなり、最も有名なのが益田岩。70年代中ごろに故益田一氏が見つけた根で、水深12mの砂地にある。

4年前の益田岩。相変わらず小魚が多い

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益田岩にはハナダイ類がたくさんいて、とにかく絵になるポイントだったが、83年ごろ大きな台風で根が3つに壊れ、以来ハナダイ類は減少。特にアカネハナゴイは完全に姿を消してしまった。

81年の益田岩。83年に和名が付いたケラマハナダイとアカネハナゴイ

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ウフタマはリュウキュウイソバナも多いのが特徴。しかしダイバーがたくさん入るようになるとしだいに折れたり、小さくなったものが目立つように。ボートのアンカーによる被害もあったため、停泊用ブイを設置するようになった。

リュウキュウイソバナとユカタハタ

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877月、岩のところでオ二イザりウオ(現オオモンカエルアンコウ)を見つけた。しばらくすると移動し始めた。ゆっくりと2mくらい進むと、それまで気づかなかったクロイザりウオ(現オオモンカエルアンコウ)があとからついている。先のイザりウオが岩に「手」をつく感じで停止すると、クロイザりウオが隣に来て「手」をつないだ。まさに神がかり的。これはいったい何パワーなのだろう。

仲良しオオモンカエルアンコウ。白枠内は数分前の状況

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ウフタマはモンガラカワハギが多く、比較的近寄れる。ただ繁殖行動は見たことがなかった。ところが、90年代終りごろようやく卵保護を見ることができた。海底にクリーム色をしたゼリー状の卵塊があり、親が守っていた。ゴマモンガラのように向かってくることもなく、気を配らないと逃げて行きそうな感じだった。こんなご利益があるのだから、やはりパワースポットにふさわしい。

卵を守るモンガラカワハギ

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