大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

〝ケラマハナダイ〟誕生秘話と生態(2)

日本のサンゴ礁域でのケラマハナダイの生息場所は、ちょっと偏っている。砂地やガレ場など平坦な海底にある根を好み、サンゴ礁が連なる場所では見られない。そうした根にはすき間や穴が多いため、クリーナーシュリンプが住み着いている場合がほとんど。そんなわけで、クリーニングを受けている姿を見るのはわりあい簡単。 

アカシマシラヒゲエビのクリーニング。右はシロボシアカモエビ(座間味)

 

本種は気が荒いのか、よくケンカをする。噛み合いに発展することもよくある。オス同士ならメスを巡ってという理由があるが、メス同士のケースも多いので、理由がよくわからない。

メス同士で噛み合う争い(座間味)

 

根に群がっているケラマハナダイをじっくり観察していると、オスだけが集まって〝行進〟することがよくある。その姿が美しいのでずいぶん狙ったが、気に入った写真を撮るのは難しい。

オスだけが密集して移動する(奄美

 

本種の繁殖期は年間を通してだが、これまで産卵を観察したのは約10回で、そのほとんどが冬。夏は他の魚類も繁殖期なので、ケラマハナダイまで目が届かなかったのかもしれない。また、オスがアピールするために体色を変える婚姻色は2タイプある。体を真っ白にし、尾ビレを赤くして激しく泳ぐ求愛はよく見られるのだが、そのまま産卵に至ることまずない。あくまでアピールのようだ。産卵直前の婚姻色は帯が表れるようになる。

2タイプある婚姻色。右が産卵直前のもの(奄美

 

産卵時刻は午後3時以降が多く、潮の流れと関係しているのだろう。産卵準備ができたメスが中層に行くと、オスが接近して体を包む体勢になり、2尾が並んで急上昇して放卵・放精する。そして共に海底へ戻る。オスは、別のメスとも産卵を繰り返すが、おそらくメスも複数のオスと産卵するものと思われる。自分の子孫を数多く残そうとすれば、当然のことだろう。

産卵の瞬間(奄美