大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

スミレナガハナダイの体色 

ハタ科のスミレナガハナダイは、全長約10cmになる。駿河湾以南の中・西部太平洋に分布している。主な生息場所は、サンゴ礁外縁の断崖付近。オスは赤紫色で、体側に四角い形をした淡い模様がある。メスは明るいオレンジ色で、目の下に紫色の線がある。オスは数尾のメスを支配するハレムをつくる。 

スミレナガハナダイのオスとメスたち(座間味)

 

オスの体側のピンクの模様が四角いことから、「サロンパス」と呼ばれることもある。

オスは四角い模様が特徴(パラオ

 

本種を含むハナダイ類は、メスからオスに性転換することが知られており、時折体色が違っている個体を見ることがある。たぶん性転換の途中なのだろう。 

性転換の途中と思われる個体(奄美

 

さらにオスに近い体色の個体も何度か見たことがある。ほとんどは本来の生息場所の外縁ではなく、通常のサンゴ礁だ。通常のオスの体色になるのを待ちわびていたが、いつまで経っても変わらない。近くにメスが2~3尾いて、中間の個体は求愛も行う。そして数年後、体色はそのままの姿で産卵を確認した。近くにはライバルオスがいないため、本来の体色にならなくてもいいのかもしれない。 

オスとして行動する、体色は中間の個体(座間味)

 

外縁に生息する本種のオスは、求愛のとき驚くほど体色を変える。ピンクの部分が増え、縞模様のようになる。いわゆる婚姻色だ。薄暗い海中では輝いて見えるため、メスは惹かれるのだろう。 

婚姻色になってメスにアピールするオス(コモド)