大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

セジロクマノミの生態

スズメダイ科のセジロクマノミは全長約12cmで、奄美大島以南の西部太平洋、東部インド洋に分布している。特徴は、オレンジ色の体に白い帯が背中を通っていることて、和名の由来になっている。宿主は触手が短いアラビアハタゴイソギンチャクで、図鑑によってはシライトイソギンチャクにも住むと書かれているが、国内では見た覚えがなく、パプアニューギニアで一度見たにすぎない。

アラビアハタゴイソギンチャクに住むセジロクマノミ(座間味)

 

本種は、インド洋に分布する、スカンク・アネモネフィッシュと似ているが、白帯の太さや宿主のイソギンチャクが異なるので、見分けがつく。アラビアハタゴイソギンチャクにはクマノミやミツボシクロスズメダイなども住めるので、一緒にいる場合もある。全長約4cmの幼魚が、ジュズダマイソギンチャクにいたことがある。本来住めないはずだが、一時的な隠れ家なのだろう。

ジュズダマイソギンチャクにいた幼魚(奄美

 

セジロクマノミは宿主のアラビアハタゴイソギンチャクからあまり離れない。警戒心が強いのだろう。また、観察を続けていると、触手に包まってじっとすることがよくある。その様子がかわいらしいので、ついレンズを向けてしまう。

触手に包まる(座間味)

 

本種の日本での繁殖期は、510月。イソギンチャクの下の岩を掃除して産卵するのだが、掃除前にイソギンチャクの触手を噛む。そうすると縮み、岩が露出するのでそこに産む。産み終わるころには触手は戻って卵が隠れる仕組み。

産卵中のメス。右は縮んでいるイソギンチャクの縁(奄美

 

パプアニューギニアPNG)周辺では、ホワイトボンネット・アネモネフィッシュがよく見られる。しかしこれは交雑種であることがわかっている。個体によって白の斑紋が異なるなど、疑問な点が多かったのだ。そして親は、セジロクマノミとオレンジフィン・アネモネフィッシュであることが判明した。交雑種をよく生み出すセジロクマノミは、きわめて生命力が強いのだろう。

セジロクマノミとホワイトボンネット。右がオレンジフィンと住むセジロPNG