大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年を振り返って

やはり新型コロナに振り回された1年だった。イベントなどはほとんど中止になり、泊りがけの旅行はゼロ。ある程度落ち着いたころ、気分転換に日帰りで千葉県勝浦市の鵜原理想郷へ行った。1963年にグループで2~3回行った思い出の場所だったが、その後訪れる機…

海のカレンダー2022

今年も海のカレンダーが揃った。最初は、グループ展「海で逢いたい」メンバーの有志6名で作成した「煌めきの海」。コロナ禍で撮影に行ける状況ではなかったので、おそらくストックからセレクトしたのだろう。中でも気に入ったのが右の大瀬崎で撮られた写真。…

クビアカハゼのこだわり

ハゼ科ダテハゼ属のクビアカハゼは、全長約6cmになる。相模湾以南の中・西部太平洋、インド洋に分布している。砂底や砂礫底にテッポウエビ類がつくった巣穴で暮らす、いわゆる共生ハゼ。赤茶色のはっきりした横帯が6本あり、目の下にも同色の帯が特徴。共生…

ゴマハギとキイロハギの関係

ニザダイ科ヒレナガハギ属のゴマハギは、全長約20cmになる。駿河湾以南の西部太平洋、インド洋に分布し、成魚は主にサンゴ礁域に生息している。体色は茶色で、後部が徐々に黒くなる。背・尻ビレが大きいことが同属の特徴。岩肌の藻類を主食にしている。同属…

シマキンチャクフグも喧嘩っぱやい

3年前、「喧嘩っぱやいハナダイ」でハナダイ類の喧嘩を紹介した。ハナダイ類ほどではないが、シマキンチャクフグもよく喧嘩をする。理由のほとんどはメスの奪い合い。シマキンチャクフグのオス・メスは外見ではわかりにくいが、目の後方にある縞模様が目立つ…

知られざる地中海の深海

ナショナルジオグラフィックのメールマガジンに「ナショジオベスト動物写真 2021年版」があり、その中にオキノスジエビの写真も。このエビは知る限り相模湾の深場にしか生息しない。撮影地を見たら、なんと地中海だった。 (本来「深海」とは200m以深をいう…

SDGs的な暮らしをする魚

今年からだろうか、SDGs(持続可能な開発目標)関連のテレビ番組が目立つようになった。SDGsは、2015年に国連で採択され、国際社会は団結して2030年を目指してこの目標を達成しよう、と合意した。目標は人権、平和、気候変動、自然保護、エネルギー、ジェン…

行動は派手・カガミチョウチョウウオ

チョウチョウウオ科のカガミチョウチョウウオは、全長約12cmで同科では小型の部類に入る。相模湾~琉球列島、台湾、南シナ海、フィリピンに分布する。そのため英名はアジアンバタフライフィッシュという。体色は白に黒い帯のような斑紋が3本で、チョウチョウ…

ほぼ伊豆固有のサクラダイ

ハタ科ハナダイ亜科サクラダイ属のサクラダイは、全長約13cm前後。メスの体色はオレンジ色で、背ビレの中央に黒斑がある。オスはメスより大きく、体色は赤。体側に白の斑紋が不規則に入っている。メスからオスに性転換することが知られているが、昔はわから…

ミヤケテグリの生態

ネズッポ科のミヤケテグリは全長約7cmで、相模湾以南の西部太平洋に分布している。1985年、三宅島から得られた標本を基に新種記載された。学名の種小名には、海洋学者のジャック・モイヤー氏の名が付いている。また、英名もモイヤー・ドラゴネットという。体…

メガネウオの謎

ミシマオコゼ科は日本に4属8種分布しているが、ダイバーになじみがあるのはミシマオコゼとメガネウオだ。前者は温帯域、後者は温帯およびサンゴ礁域で見られ、どちらも砂地に潜って顔だけ出し、待ち伏せして獲物を捕らえる。 砂に潜って待ち伏せするメガネウ…

真鶴さんぽ

最近、運動と気分転換を兼ねて「海さんぽ」をしている。先々週は千葉県外房、先週は真鶴を散歩した。昔はダイビングでよく通った真鶴だが、84年が最後に。70年代後半に漁業者とダイバーのトラブルが生じ、伊豆に足を延ばしたり、撮影拠点を沖縄中心にしたこ…

目玉模様を持つ魚(成魚編)

成魚で目玉模様を持つものは、基本的には幼魚期からある。チョウチョウウオ科のハシナガチョウチョウウオは、背ビレ後部に目玉模様が入っている。 ハシナガチョウチョウウオのペア(ラジャアンパット) フサカサゴ科のハチは、背ビレのほぼ中央に目玉模様が…

目玉模様を持つ魚(幼魚編)

魚の中には目玉模様を持つ魚がたくさんいる。特にベラ類、スズメダイ類、チョウチョウウオ類などの幼魚の場合が多い。目玉模様は外敵をビックリさせたり、惑わせたり、本物の目を守る役目があると考えられている。 ベラ科のホクトベラの幼魚は、背ビレと尻ビ…

ミノカサゴについて

フサカサゴ科のミノカサゴは北海道~種子島、東シナ海、朝鮮半島南部に分布している。全長約25cmで、岩場や砂地などに生息している。レースのような胸ビレを揺らしながら優雅に移動する姿はとても美しい。動きがゆっくりなので、撮りやすいのもうれしい。 ミ…

アブラヤッコ属の繁殖見るなら、今でしょ!

キンチャクダイ科アブラヤッコ属は、全長約10cmの小型の種がほとんど。警戒心が強いのが特徴。主にサンゴ礁域に生息し、日本で見られる代表的なものはアブラヤッコ、ナメラヤッコ、ヘラルドコガネヤッコ、アカハラヤッコなどだ。繁殖期は初夏から秋まで。 ア…

「マリンダイビングWEB」復活‼

今年7月、(株)水中造形センターが破産。それに伴い、ダイビング雑誌『マリンダイビング』や「マリンダイビングWEB」、そしてイベントの「マリンダイビングフェア」などが終わってしまったと思っていた。ところが、新たな動きが… 元スタッフ有志が新しい会…

ミツボシキュウセンの繁殖生態

ベラ科のミツボシキュウセンは、相模湾以南の太平洋、東部インド洋に分布し、全長約18cmに達する。主な生息場所はサンゴ礁域になる。オスは体の前部に模様があり、後部は白っぽくて尾ビレが黄色い。また、尾柄部の上に黒斑がある。 ミツボシキュウセンのオス…

サンゴを見れば環境がわかる

浅い海で見られるサンゴは、骨格が硬いのでイシサンゴという。また、成長して礁をつくるため、造礁サンゴともいう。サンゴ礁とは、生物がつくった構造物(地形)のこと。サンゴ礁が発達する条件は、①水温が18.5℃以下にならないこと。②太陽光が届く水深40m未…

軽石漂着その後

19日に、大量の軽石が奄美や沖縄に漂着したことを取り上げた。その後のニュースで、深刻な事態になっているようだ。 沖縄北部の港に漂着している軽石(TBS サンデーモーニングより) 沖縄の国頭村では養殖していた魚が死んだという報道があった。その魚種は…

オニベラは超高速

ベラ科のオニベラは相模湾以南の西部太平洋、インド洋に分布している。全長約15cmになる。相模湾で見られるのは幼魚で、成魚は高知県以南。オスの体色は緑が基調で、水色の縦スジが4本入り、背ビレが赤い。最大の特徴は泳ぎが素早いこと。おそらくベラ類では…

カンモンハタの生態

ハタ科のカンモンハタは、相模湾以南の太平洋、インド洋に分布し、主にサンゴ礁域で見られる。大型になるハタ類の中で本種は、全長約30cmにしかならない小型種。茶色い不規則な多角形の斑紋が全身に入っていて、その斑紋が横や斜めに二つ三つ連なる傾向があ…

軽石漂着で分布の謎解明!?

10月15日、大量の軽石が奄美大島の海岸に漂着した、とのニュースがあった。小笠原諸島の南硫黄島近くの海底火山・福徳岡ノ場で8月13日の噴火によって噴出した大量の軽石が、2か月かけて奄美群島や沖縄本島に流れ着いたのだ。このことにより、今まで不思議に…

妖しく揺れるスナイソギンチャク

数多いイソギンチャクの中で、砂底で見られるのがスナイソギンチャク。ウメボシイソギンチャク科に属し、太めの触手が48本ある。本数は決まっているようだ。長さは20cmくらいで、それぞれが艶めかしく動く様は、見ていて飽きない。また、色彩変異も豊富なこ…

クレナイニセスズメ属について

クレナイニセスズメという美しい魚がいる。メギス科メギス亜科クレナイニセスズメ属で、全長約6cmほど。サンゴ礁域の岩穴や岩陰などに生息し、動物プランクトンをエサにしている。肉眼で見ると青紫だが、ライトを当てると赤紫に輝く。日本では奄美や沖縄で見…

ワモンダコの生態

サンゴ礁域で見られるタコの大部分はワモンダコ。目の近くに丸い斑紋があるため、輪紋タコと付けられた。体を伸ばすと70~80cmになる。8本の足は、ものをつかんだりでき、手のような働きをすることから腕(うで)という。ふだんは岩の隙間や穴に潜んでいるが…

色彩変異著しいヒトスジモチノウオ

ベラ科ホホスジモチノウオ属のヒトスジモチノウオは、伊豆諸島以南の太平洋、東部インド洋に分布している。全長は約40cmに達するようだが、実際に出会うのは30cm前後が多い。尾柄部に白の横帯があるのが特徴で、体色・斑紋は個体によってかなり変異がある。 …

油壷マリンパーク閉館

三浦半島にある水族館・京急油壷マリンパークがきのう(9/30)閉館。53年の歴史に幕を閉じた。マリンパークには二三度行った覚えがあるが、かなり昔のことでもあり、他の水族館とごっちゃになってしまい、これといった印象は残っていない。ただ、マリンパー…

スズメダイ類の産卵場所(最終回)

今回のテーマ最後は、生息数が多いナミスズメダイ。生息場所はどちらかというと内湾なので、枝状サンゴが群生している付近でよく見られる。産卵に利用しているもので最も多いのは死サンゴだが、特にこだわりはないようだ。硬いものなら何でもいいらしい。 死…

スズメダイ類の産卵場所(その3)

サンゴ礁域に生息するスズメダイ類は、サンゴを産卵場所に利用するものも多い。とはいっても、生きているサンゴではなく、死滅しているか、白化などで活動停止しているサンゴだ。生きていると表面のポリプや粘液で卵は付着しない。例え付着しても、サンゴは…