大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

知られざる地中海の深海

ナショナルジオグラフィックメールマガジンに「ナショジオベスト動物写真 2021年版」があり、その中にオキノスジエビの写真も。このエビは知る限り相模湾の深場にしか生息しない。撮影地を見たら、なんと地中海だった。

(本来「深海」とは200m以深をいうが、ここでは通常のダイビングでは行けない深さなので、深海と表現した)

フランス・マルセイユ沖の深海に住むオキノスジエビ

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20215月号に「地中海で潜り続けた28日」という特集があったようだ。見落としていたのでたどってみると、フランスの探査チームが、最先端の潜水システムで100m前後の海底に潜って撮影している。そのシステムとは、はしけに居住室を設置し、高圧のヘリウムと酸素の混合ガスで満たす。ここで生活し、潜るときはリブリーザーを背負い、やはり高圧の潜水鐘(釣り鐘型の潜水艇)に乗って潜航。海底に着いたら出て調査・撮影を行うというもの。リブリーザーは23時間は持つので、かなり長時間滞在できる。浮上するときも潜水鐘に乗り、居住室にドッキングして部屋に入る。常に高圧下にいるため、浮上の際の減圧も必要ないとのこと。

水深3mに設置された居住室。中は高圧なので海水は入らない

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水深68mで撮られたヨーロッパオオヤリイカマトウダイの写真もあった。ヤリイカは交接していて、たまたまとはいえ絶妙のタイミングだ。マトウダイはフランス語でサン・ピエールというらしいが、フランスでも美味しい魚として人気とのこと。

交接するヤリイカマトウダイ

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地中海の海底はさほどきれいというイメージではなかったが、カイメン類やヤギ類が豊富で、変化があるうえ美しいので驚いた。

カラフルな海底。後ろに見えるのが潜水鐘

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水深104mで撮られた壺の写真もあった。古代ローマ時代の難破船の積荷とのこと。この深さでの撮影となると、撮影機材はどうなのだろうか。カメラについては触れられてなかったが、高圧の居住室でハウジングにカメラをセットすれば、通常のシステムでも大丈夫なのだろう。それにしてもきれいな画像ばかりだ。すべての探査が終了したあとは、居住室で5日過ごして減圧したそうだ。それにしてもダイビング器材やシステムの進歩に驚いている。

古代ローマ時代の壷(いずれの画像もナショジオメルマガより転写)

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