大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

色彩変異著しいヒトスジモチノウオ

ベラ科ホホスジモチノウオ属のヒトスジモチノウオは、伊豆諸島以南の太平洋、東部インド洋に分布している。全長は約40cmに達するようだが、実際に出会うのは30cm前後が多い。尾柄部に白の横帯があるのが特徴で、体色・斑紋は個体によってかなり変異がある。

ヒトスジモチノウオの成魚(座間味)

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体色・斑紋の変異は、成長過程によるものだが、感情の変化によっても変化する。特徴でもある尾柄部の白帯が消えることさえある。オスとメスの区別もよくわからない。尾ビレが黄色いものがメスかと思っていたが、そうとも限らないようだ。

全長約15cmの若魚(座間味)

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幼魚の体色は薄茶色で、口から尾まで茶色の帯が1本ある。そして帯の後部に小さな目玉模様が二つ入っている。ヤギ類などの付着生物のそばで見ることがある。

全長約4cmの幼魚(座間味)

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ヒトスジモチノウオは警戒心がないうえ、動きもゆっくりなので実に撮影しやすい。

良い被写体になる。全長約25cmの成魚(座間味)

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繁殖期は初夏から秋だが、生息数が多くないので繁殖行動を見るのは難しい。6月にオスと思われる個体が、体色を派手にして泳ぎ回っていた。メスを探している状態だとすぐにわかった。

婚姻色のオス(奄美

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しばらく観察していると、未成魚がいた。そしてオスがその未成魚を追いかけ始めた。模様がほとんどなかったので未成魚かと思ったわけだが、これがメスで、求愛をしていたのだ。オスは何度もアピールを繰り返し、その後並んで急上昇して産卵を行った。貴重な場面は、フィルムが終わっていて撮ることができなかった。

メスに求愛するオス(奄美

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