大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

人気者・ミナミハコフグ裏話

今でこそ黄色に黒い斑点の幼魚を知らないダイバーはいない。そう、ミナミハコフグだ。しかし、80年代初めまではハコフグと混同されていた。ミナミハコフグが新種記載されたのは1758年とかなり昔。それからなんと226年後,『日本産魚類大図鑑』(1984年発刊、東海大学出版会)に初登場。ミナミハコフグ(新称)が日本デビューした。

ミナミハコフグの幼魚(三宅島)

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分布は房総半島以南の西部太平洋、インド洋の熱帯・亜熱帯海域。全長40cmに達するらしいが、出会うのは30cm以下が多い。幼魚は目立つので気づきやすいが、成魚は見る機会が少ない。

仔魚は浮遊生活しながら一部は黒潮に運ばれる。それで本州でも見られるわけだが、日本海佐渡で出会ったことがある。対馬海流で運ばれたのだろう。

4cmの幼魚(佐渡

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本種は成長に伴って体色・斑紋が変化するが、観察例が少ないため、よくわかっていない。人気があるのは幼魚期だけのようだ。幼魚から若魚になるとしだいに明るい茶色になり、黒点は消えて代わりに白い点が現れるようだ。さらに成長すると白点は黒で縁取られ、メスの体色になる。

ミナミハコフグのメス(奄美

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一方オスは白点はない。体色は青みがかった灰色で、背面に黒ずんだ丸い斑紋が並び、尾柄部は黄色くなる。未成魚の時点ではメスの体色のものばかり。オスの体色をした未成魚はいないので、もしかしたら性転換するのではないだろうか。

ミナミハコフグのオス(奄美

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本種やハコフグ、クロハコフグウミスズメなどはハコフグ科になる。フグと付くのでフグの仲間だと思っている方が多いと思うが、実は違う。フグ目はフグ亜目とモンガラカワハギ亜目に分かれ、フグ亜目のグループをフグの仲間とする学者が大半を占める。ハコフグ科はモンガラカワハギ亜目なので、『日本産フグ類図鑑』(松浦啓一著 東海大学出版部)には載っていない。

ミナミハコフグの若いメス(奄美

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