大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

2016-01-01から1年間の記事一覧

キスジゲンロクダイの分布域

タキゲンロクダイの近縁種のキスジゲンロクダイは、体型が丸みを帯びていること、体側の帯の色が明るいことなどで識別できる。 キスジゲンロクダイのペア(コモド) また、成魚でも背ビレに目玉模様があるのも特徴になっている。多くの場合、ペアで行動して…

タキゲンロクダイの分布域

チョウチョウウオ科タキゲンロクダイ属はタキゲンロクダイ、キスジゲンロクダイ、ツーアイコーラルフィッシュの3種がいる。日本に分布するのは和名がある2種のみ。 32年前に出会ったペア(三宅島) '84年に三宅島で初めてタキゲンロクダイに出会い、ニコノス…

かつては日本固有種・レンテンヤッコ

キンチャクダイ科アブラヤッコ属のレンテンヤッコは、温帯に適応した種。相模湾以南~奄美大島、伊豆諸島、小笠原諸島に分布する。かつては日本固有種だったが、'81年にアメリカ領ミッドウェイ島のクレ環礁で若魚が発見され、固有種ではなくなってしまった。…

小さな水先案内人・コガネシマアジ

マンタやサメなど大型魚の口元あたりに小さな魚がいることがある。ブリモドキやコガネシマアジで、先導しているように見えることからパイロットフィッシュ(水先案内人)と呼ばれている。 水先案内人とマンタ。ラジャアンパット ブリモドキはサメに、コガネ…

珍魚!?ヒオドシベラ

ヒオドシベラの幼魚を初めて見たのは座間味で、34年前のこと。水深約15mにあるイソバナのそばにいて、全長約6cmだった。昔のことなのになぜはっきり覚えているかというと… 全長約8cmのヒオドシベラの幼魚(座間味) 自分の中ではかなり衝撃的だったので、ロ…

絢爛豪華・錦奴

「錦」には、豪華な絹織物とか美しくて立派などという意味がある。キンチャクダイ科のニシキヤッコは、その名にふさわしい体色をしている。 ニシキヤッコのペア(慶良間) 伊豆諸島、奄美大島以南の中部太平洋、インド洋、紅海に広く分布する。単独ないしペ…

「日本代表」のチョウチョウウオ

チョウチョウウオ科のシラコダイは、英名でジャパニーズバタフライフィッシュという。学名も「Chaetodon nippon」で、日本代表の魚といってもいいくらいだ。 シラコダイ(八丈島) こうみると日本固有種と考えがちだが、そうではない。台湾やフィリピンにも…

ダイバーに身近な未利用魚

漁場で網に入ったものの、量が少ないために流通に乗らない魚もある。いわゆる雑魚(ざこ)で、「未利用魚」というらしい。大部分が廃棄されているとか。最近、未利用魚を活用する動きが活発になっている。 未利用魚の代表(NHK・サキドリより) テレビ番組で…

オキスズメダイの不思議な生態

'95年9月、奄美大島の水深約7mで見知らぬスズメダイを撮影した。当時、手元にあった数冊の図鑑には載っていない。実際には『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)に掲載されていたが、標本写真だったために照合できなかったのだ。 オキスズメダイの未成魚 …

サンゴの寿命

サンゴの寿命はどのくらいなのだろうか。種や生息環境によっても異なるだろうが、おそらく数十年、数百年という単位だと思うので、詳しいデータはないに違いない。 通常のコモンシコロサンゴ。大きさは2~3m なぜこのようなことを思ったかというと、大好きな…

変化に富むコロダイの幼魚

コロダイはイサキ科で、明るいグレーの地に黄色っぽい細かな斑点がある。南日本以南の西部太平洋、インド洋に分布する。全長60cm以上になるらしいが、日本では50cmくらい。 全長約50cmのコロダイの成魚(柏島) コロダイはコショウダイの仲間。イサキ科はコ…

コバンザメの謎

コバンザメはスズキ目コバンザメ科。以前はコバンザメ目だったが、現在はスズキ目に含まれる。それはともかく、サメとは分類的にかなり離れているにもかかわらずこの名が付いているのは、体型が似ているからだろうか。 ナポレオンフィッシュに付くコバンザメ…

キハッソクの謎

以前、キハッソクは日本の固有種かと思っていた。まぁ固有種は言い過ぎだが、日本の近くにしかいないのかと思っていたのだが、海外のほうがよく見るので考えを改めた。 キハッソク(ラジャアンパット) 日本では単独がほとんどなのだが、海外では数尾でいる…

ハシナガチョウチョウウオについて

ワヌケヤッコを取り上げたのだから、ハシナガチョウチョウウオも取り上げねばなるまい。なぜなら、まったく同じ経緯なので。ハシナガチョウチョウウオも先に挙げた東海大学出版会と山と渓谷社二つの図鑑に載っていて、石垣島が北限になっている。 ハシナガチ…

ワヌケヤッコについて

1984年に発刊された『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)には、ワヌケヤッコが載っている。また、『日本の海水魚』('97年、山と渓谷社)にも掲載されている。日本の海で確認された例はないにもかかわらず、掲載されているのはどうしてだろうか。 タイ・…

コガネアジ・体色の不思議

アジ科のコガネアジは、その名が示すように黄金色(こがねいろ)をしている。全長約40cmで、熱帯海域に生息している。日本には少ないが、海外ではよく見られる。 真っ黄色のコガネアジ 単独か2尾で行動していることが多く、稀に5~6尾のときもある。コガネア…

「さわやか自然百景」LOVE

毎週日曜朝放送のNHK「さわやか自然百景」。15分の番組ながら、日本各地の自然をテーマに「カメラをあまり振らない」「1カットの時間が長め」など基本に忠実なつくりで、落ち着いて見ることができる。 さわやか自然百景のタイトル 毎回見るようにしているが…

座間味ツアー(最終回)

安室島の北西側にコンクリートブロックを沈めた人工漁礁がある。漁というより、ダイビングポイントして'70年代後半に沈めたので、40年近くになる。 隠れ家に利用するアカククリ 一時はここで魚の餌づけを盛んに行っていたため、たくさんの魚が見られた。今は…

座間味ツアー(6)

ハマクマノミとクマノミが隣り合わせの場所があった。前者はタマイタダキイソギンチャクに住み、後者はアラビアハタゴイソギンチャク。 ハマクマノミとクマノミ どちらも宿主(しゅくしゅ)のイソギンチャクには相性があり、入れ替わることはない。アラビア…

座間味ツアー(5)

幼魚にもたくさん出会った。特に多いと感じたのはヤリカタギ。サンゴのポリプをエサにしているため、その周りにいる。 ヤリカタギの幼魚 せわしなく動くので撮りにくいが、動きを観察すると通り道がわかり、待ち伏せできるようになる。 スミツキトノサマダイ…

座間味ツアー(4)

チョウチョウウオ類はよくペアで行動している。大きな理由は、繁殖のときに都合がよいことと、エサを食べるのに効率がよいからだ。摂餌中縄張り意識が強い藻食性スズメダイに追い払われることがあるが、ペアならばどちらかが食べ続けられる。 ニセフウライチ…

座間味ツアー(3)

潜っていてウミヘビに出会うことがある。ウミヘビには魚類と爬虫類がいて、後者は呼吸をするためにときどき水面まで行く。また爬虫類のほうは毒牙があるが、被害例はない。毒牙は小さくて奥にあるからのようだ。 砂地を移動中のクロガシラウミヘビ 今回も砂…

座間味ツアー(2)

イソギンチャクの大半は白化していたが、特にハマクマノミが住むタマイタダキイソギンチャクはほとんど白くなっていた。 白化の影響を受けた二つのイソギンチャク 右のイソギンチャクは元々赤かったが、おそらく白化現象の影響で淡い赤になったようだ。 ピン…

座間味ツアー(1)

ダイビングツアーで沖縄・座間味に行ってきた。座間味は2年前、NHK「さわやか自然百景」のロケで行って以来になる。 高月山からの眺望。座間味港と無人島 今回は4月にピースボートに乗船した際、ダイバーの方々との飲み会で沖縄に潜りに行こうと盛り上がり、…

1年ぶりのコモド(最終回)

今回コモド諸島を2クルーズして気づいたことがいくつかある。最終回は、これまでと比べて変化したことや気づいたことを取り上げてみる。 真っ白になったセンジュイソギンチャク まず、全体的に水温が高かった。特に南エリアは27℃くらいあり、今までで最高だ…

1年ぶりのコモド(9)

コモド諸島の南エリアでは、お皿やすり鉢の形をしたサンゴがよく見られる。そこに魚が入っていることも多い。大抵はホンソメワケベラなどのクリーナーがいるからだ。 ホンソメワケベラに癒されるヒラニザ クリーニングをしてもらう癒しの場になっているため…

1年ぶりのコモド(8)

セントラルエリアのもう一つの代表的なポイントはバトゥボロン。岩の穴という意味。海峡の中にあるため、いつも流れがある。 岩の周りがポイント ここだけではないが、必ずスタッフがそばまで行って流れのチェックを行い、どのあたりで潜るかを検討する。 ロ…

1年ぶりのコモド(7)

南エリアで潜り終えると北上してセントラルエリアに。代表的なポイントはピンクビーチ。その名のとおり砂浜がピンク。赤いパイプコーラルが砕けた粒が白い砂と交ざってピンクに見える。 ピンクビーチ('11年撮影) 観光客が上陸するピンクビーチの沖がダイビ…

1年ぶりのコモド(6)

同じ南エリアでもコモド島の南は少し趣が異なる。特に木造船が沈んでいるポイントはサンゴもきれいで、マンジュウイシモチやシリキルリスズメダイなどが見られる。 浅瀬はきれいなサンゴ礁 沈船は以前と比べると朽ちていて、隠れ家として利用する魚も少なく…

1年ぶりのコモド(5)

カーニバルロックから湾の奥に進むと、別のポイントがある。スロープになった転石帯で、やはりウミシダ、ムチカラマツ、カイメン、ホヤなどの底生生物が多い。 クラカケベラ 目の前に現れたのはクラカケベラ。日本のものは約20cmだが、それに比べるとやや大…