大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ワヌケヤッコについて

1984年に発刊された『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)には、ワヌケヤッコが載っている。また、『日本の海水魚』('97年、山と渓谷社)にも掲載されている。日本の海で確認された例はないにもかかわらず、掲載されているのはどうしてだろうか。


タイ・プーケットのワヌケヤッコ

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事の発端は『日本沿岸魚類の生態』('71年、檜山、安田共著)のようだ。この中でワヌケヤッコの分布の北限を沖縄としていたという。本来、日本初記録種は標本が必要なのだが、チョウチョウウオ科やキンチャクダイ科のように個性的でひと目でわかる種については、研究者の目視でも認められる風潮があったようだ。







ワヌケヤッコと分布域                                         

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海外から出版されている、キンチャクダイ科とチョウチョウウオ科をすべて網羅した図鑑によると、ワヌケヤッコの分布はけっこう広い(地図の青い範囲)。しかし個体数はそう多くないようで、分布域でも見られないこともよくある。この写真のワヌケヤッコは、インドネシアのプロウ・スリブ(ジャカルタ北部の島)で撮影した。






タオ島のワヌケヤッコ。確かに短い
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わりあいよく見られるのはタイだ。タイは太平洋側とインド洋側どちらにも面している。太平洋側に位置するタオ島のダイビングサービスのスタッフの話では、太平洋側とインド洋側のワヌケヤッコの背ビレ後端の長さが異なり、タオ島のものは極端に短いとのこと。








ミラン諸島のワヌケヤッコは長い                                           

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インド洋側のプーケットやシミラン諸島(いずれもタイ)で撮影したワヌケヤッコの背ビレ後端は、確かに長くなっている。











ニューギニア島のワヌケヤッコ
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ニューギニア島の西側はインドネシア領で、その海域をダイブクルーズしたときにワヌケヤッコと出会った。背ビレ後端を見ると、プーケットほどではないが長い。

その他の海域で撮影された写真を調べてみると、個体によって多少の違いはあるものの、タオ島のように極端に短い個体は見られない。おそらくタオ島があるシャム湾が特殊な海域なのだろう。