ハタ科のスジハナダイは全長約14cmになり、伊豆半島以南の西部太平洋に分布している。エラ蓋付近から尾柄部まで赤帯が1本入っているのが特徴。やや深い岩礁域に生息している。高知の魚類相の調査、分類学の研究をされていた蒲原稔治博士により、1954年新種記載された。
スジハナダイ(奄美)
スジハナダイを初めて見たのは西伊豆の大瀬崎だった。水深は30mを超えいたと記憶している。その後は伊豆大島で、やはり30mを超える深さだった。大島では体側の赤帯がはっきりしない個体を目にした。おそらくオスで、メスにアピールするときに赤帯を目立たなくする傾向があるようだ。
オスと思われる個体(伊豆大島)
スジハナダイを温帯域の魚と思っていたが、沖縄・座間味でも外洋の深場に生息していることがわかった。奄美でも外洋のポイントで、水深38mあたりにハレムをつくっていることを発見した。オスは体色を変化させ、盛んにメスに対してアピールしていた。
ナンヨウキサンゴのそばのハレム(奄美)
スジハナダイは1990年くらいまで日本固有種だったが、94年発刊の図鑑には西部太平洋も加えられた。海外では見たことがないので、国立科学博物館&生命の星・地球博物館共同の魚類写真資料データベースで調べたところ、ほとんどは伊豆で、他は串本、高知、沖縄、そして海外はフィリピンだった。
それはさておき、最初に発見された場所は高知で、柏島周辺と推測できる。そこで柏島で潜った際に、注意して探したところ、それらしきハナダイを水深38m付近で撮影した。ところが肝心の赤帯がないため、フォルダにしまったままだった。その後オスは赤帯を消すことがあるとわかったため、使用することができた。
奄美の外洋でハレムを見つけたポイントから数キロ離れたところでも生息が確認された。そこは大きなハレムではなかったものの、1尾のオスが婚姻色になって数尾のメスに求愛していた。赤帯は消え、スジハナダイとは思えないほどだった。これまで出会ったスジハナダイの生息水深は、30m以深というのが共通することだった。
婚姻色のオス(奄美)