大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

カエルアンコウの “釣り竿”

カエルアンコウの仲間は、ルアー(釣り)をすることで知られている。イリシウムといわれる “釣り竿” が口の近くについていて、先端にエスカと呼ばれる疑似餌がある。それを振ることにより、エサと間違えて近寄って来る小魚を捕食するのだ。このような捕食行動について図鑑などに書かれているが、実際にはなかなか見ることはできない。しょっちゅう “釣り竿” を振っているわけではないし、小さくて目立たないからだ。

黒いタイプのクマドリカエルアンコウは“釣り竿”が目立つ(八丈島

 

カエルアンコウ科は日本に15種分布しているが、ダイビングで見られるのは5種くらい。調べてみると、“釣り竿”の長さや太さ、疑似餌の形などはそれぞれの種や成長段階で異なるようだ。体が最も大きいオオモンカエルアンコウの“釣り竿”は、とても細く、疑似餌も小さい。アンカーを固定するロープに逆さになったとき、なぜか下に垂れ下がった。

オオモンカエルアンコウの“釣り竿”(奄美

 

最初に“釣り竿”を意識したというか、確認したのは、奄美で白いタイプのクマドリカエルアンコウを撮影していたときだ。ふだんはじっとしているはずなのだが、この個体は動いている。そうしているうちに居場所を決めたようで、すかさず“釣り竿”を上げた。そして斜め前に倒して振り始めたのだ。周囲には小魚はいない。エサとなるものがいなくても疑似餌を振ることをこのとき知った。しばらく観察していたが、何の変化もなかった。

“釣り竿”を振る白いタイプのクマドリカエルアンコウ奄美

 

カエルアンコウが“釣り竿”を振っているのを見たときはビックリした。エスカ(疑似餌)が大きかったからだ。ゴカイに似せているのだろう。また“釣り竿”も太くて、小魚にばれてしまうのでは、と心配になるくらいだ。でもこのときも近くに小魚はいなかった。もしかしたら、いざというときのための練習かもしれない。

大きな疑似餌を振るカエルアンコウ(大瀬崎)

 

これまで撮影した写真をチェックすると、“釣り竿”が確認できたのはここにアップした分だけだった。あまり参考にはならないかもしれないが、最も“釣り竿”を振る種はクマドリカエルアンコウということがわかった。

“釣り竿”を上げたクマドリカエルアンコウ(座間味)