大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

広告の歴史展

汐留のアドミュージアム東京で行わている「これって広告?!展~拡張する?!世紀の広告クリエイティブ」を見た。昔、広告の仕事をちょっとだけ携わった関係で、興味があったのだ。疑問符と感嘆符は21とかけている。本展は、絶え間なく変化し続けてきた21世紀最初の約20年間の広告の姿を、「拡張」をキーワードに紹介している。会場はわりあい若者が多かった。

「これって広告?!展」

 

それとは別に、広告の歴史も展示している。広告の始まりは江戸時代で、いろいろな店ができたときに存在を示すため、看板を付けたのが最初とのこと。その後、版画が普及し、呉服問屋の越後屋が今でいうチラシを刷って配ったのがきっかけで、多様な広告物が誕生したようだ。

江戸時代の広告

 

明治に入ると印刷機が導入され、ポスターがつくられるようになった。驚いたことにカルピスのポスターがあった。大正15年(1926年)と書かれていて、実際のビンも展示されていた。こんな昔からあったとは信じがたい。

カルピスのポスターとビン

 

それぞれの時代背景が広告にも表れているのは当然で、太平洋戦争になると、「国のため」的なポスターが大半を占めていた。テレビが登場する5060年代は懐かしいポスターやCMが展示してあった。また、64年の東京オリンピックのポスターもあった。

60年代のポスターやCM

 

また、広告に使われて流行ったキャッチコピーなども年代ごとに展示され、当時のことが思いだされた。モニターもたくさんあり、さまざまなパターンがゲーム感覚で見られるような方式が、若い人を引きつけたのだろう。

多様な展示がなされた会場の様子

 

海の危険生物

夏休みに入り、海で磯遊びやスノーケリングを楽しむ人が多いと思う。波や潮の流れなどに気をつけるのは当然として、危険な生きものもたくさんいるので、注意が必要。そこでいくつか紹介しよう。

まずはクラゲの仲間のカツオノエボシ。浮袋から長い触手が出ていて伸び縮みする。触手は猛毒で、触れると激しく痛み、ミミズばれになる。首の辺りを刺されると、呼吸困難になるという。応急処置としてお酢をかけるとよいらしい。

カツオノエボシ(三宅島)

 

フトガヤは植物のように見えるが刺胞動物。肌に触れるとかなり痛い。サンゴ礁域でよく見られる。同じ仲間でシロガヤやクロガヤ、ハネガヤなどは温帯域にも分布し、有毒生物として知られている。鳥の羽根のような形の生物は、有毒と覚えておこう。

フトガヤ(座間味)

 

イシサンゴの仲間の多くは無毒だが、アナサンゴモドキは刺胞毒があり、刺されるとかなり痛い。細かな刺胞が出ているので識別できる。

ホソエダアナサンゴモドキ(座間味)

 

ウニ類はトゲがあるので危険を察知できるが、トゲがないものもいる。ラッパウニやイイジマフクロウ二だ。どちらも有毒なので、触らないこと。特にイイジマフクロウニは強毒なので、注意してほしい。

貝殻や石を付けたラッパウニ。右はイイジマフクロウ二(2点とも大瀬崎)

 

魚も毒トゲを持ったものがたくさんいる。カサゴ類やオコゼ類などだが、攻撃してくることはないので心配いらない。ゴンズイも背ビレと胸ビレに毒トゲがある。しかし、水中で出会っても刺されることはまずない。釣り上げたときにつかんで刺されるケースがほとんど。オコゼ類なども砂に潜っていることもあるため注意が必要だ。

ゴンズイ(富戸)

 

涼しくなる水中写真

厳しい暑さが続いている。猛暑日には出社を停止し、オンラインで業務を行う、という会社まで現れた。そこで何とか涼しさをお届けしたいと思い、涼し気な水中写真を選んでみた。最初はアオウミガメ。やや遠め配し、水色のトーンで海の広がりを強調した。

広い砂底をのんびり行くアオウミガメ(奄美

 

古座間味ビーチの波打ち際は、波の関係で急に深くなっている。水面から差し込む光が砂地に模様を描く。

波によってさまざまに変わる光の模様(座間味)

 

マンタが水面近くに集まる場所は、エサのプランクトンが豊富なところ。潮の流れに向かって進んで行く。

エサを食べにやって来たナンヨウマンタ(コモド)

 

12年前にフリーダイビングの岡本美鈴(当時・平井美鈴)選手を撮影する機会があった。この当時はアジア・日本チャンピオン。モノフィンで華麗なダイビングを披露してくれたので、いろいろなシチュエーションで撮影してみた。

コモンシコロサンゴの奥で優雅なフォームの岡本美鈴選手

 

海の生きものは色鮮やかなものが多く、ストロボなどの照明を当てると暖色系の色合いになる。いくらキレイでも涼しさは感じられない。そこでデバスズメダイの登場。体色が涼し気なので、照明を当ててもさほど変わらない。

枝状サンゴに群れるデバスズメダイ(座間味)

 

「旅サラダ」で奄美

毎週土曜日の朝、テレビ朝日で放送の旅番組「旅サラダ」。毎週楽しみにしているが、今朝(7/20)は女優の木村文乃奄美大島を旅した。20年前、奄美が舞台の映画「アダン」がデビュー作で、そのロケ以来の奄美だそうだ。ダイバーでもある木村文乃は、奄美で潜らないはずはない。

旅サラダのタイトル。空港の北に位置するあやまる岬

 

「アダン」は、孤高の画家・田中一村奄美に移住してからの生涯を描いた映画で、木村文乃はアダンの精霊の役だったそうだ。そこでまずは田中一村記念館を訪ねた。その後ゴージャスなホテルや大島紬、郷土料理の紹介のあとは、パラグライダー。空から見るサンゴ礁は別格。島の中で最も狭く、東シナ海と太平洋が見えるところも映った。

パラグライダーの風景。下は最も狭いところ

 

ダイビングは北部のネバーランドで、代表の古田氏がガイド。生物の繁殖の季節なので、そういったものを見せたいとのこと。

ネバーランドの古田氏。下はエントリー直前の木村文乃

 

クマノミやナミスズメダイが卵を守っているシーンのあと、人気のカクレクマノミも卵の世話をしていた。

卵の世話をするカクレクマノミ

 

夜も潜ってサンゴの産卵を狙うという。今年は5/21ミドリイシの産卵があったが…。旅サラダのロケは、奄美が梅雨明けしたばかりの満月の翌日とのことなので、6/23になる。ミドリイシ類ではないサンゴが産卵しているのが見られた。

奄美の海に潜りたくなった番組だった。

サンゴの産卵

 

ミスジスズメダイの地域変異

スズメダイ科のミスジスズメダイは、伊豆半島以南の西部太平洋に分布している。全長約5cmの小型種で、砂底に転石がある環境に生息する。白い体に黒い帯が3本あることでこの名が付いた。新種記載されたのは1974年で、日本初記録もほぼ同時と思われる。というのも、75年発刊の『魚類図鑑~南日本の沿岸魚~』(東海大学出版会)に載っていたからだ。

黒帯が3本のミスジスズメダイ(座間味)

 

主な生息場所はサンゴ礁域だが、幼魚は温帯域によく出現するらしい。70年代後半に伊豆海洋公園でしばしば観察したという話を聞いた。残念ながら温帯域では見たことがないが、座間味のわりあい深いところで幼魚と出会ったことがある。

ウミトサカの根元にいた約3cmの幼魚(座間味)

 

本種は生息数がさほど多くないようで、出会った場所がだいたい決まっている。そのわりには特別変わった行動は見た覚えがない。

砂地の環境が好みのミスジスズメダイ奄美

 

87年発刊の『世界の海水魚』(山と渓谷社)で、サンゴ海で撮影されたミスジスズメダイが載っていた。顔以外の黒帯が腹ビレと尻ビレまで伸びている。おそらく地域変異だろう。サンゴ海はオーストラリアの北東からニューカレドニアパプアニューギニアあたりの海域のこと。いつか撮影したいと思っていて、2010年にニューカレドニアで実現できた。

地域変異のミスジスズメダイニューカレドニア

 

本種の繁殖に関する行動は見たことがない。タイのタオ島では空缶の中に入っていたが、産卵はしていなかった。このような空缶などを利用するか、石の下に巣穴を掘って産卵するのだろう。水納島の知人からの今年の年賀状に、ミスジスズメダイが卵を守っているのを初めて見ました、と書かれていたので、島に住んでいても卵保護はなかなか見られないものなのだと実感した。

空缶から顔を出すミスジスズメダイ(タイ・タオ島

 

最新の身近な情報

昔、行った場所や出会った人の新しい情報を知ることは、何となくうれしい。それがよかったことでも、悪かったことでも、懐かしさが勝るからなのだろう。7/12に届いたナショジオのメルマガに、オーストラリアの最南端のサンゴ礁が白化した、という記事が載っていた。最南端のサンゴ礁といえば、世界遺産でもあるロード・ハウ島だ。20013月に取材したことがある。シドニーまたはブリスベンから飛行機で約2時間の孤島でもある。

連なる山がシンボルのロード・ハウ島20013月)

 

ロード・ハウ島周辺の水温は、冬季は16℃、夏季で26℃だったが、直近は29℃まで上がったようだ。それで白化したのだが、さらに海流の影響で潮位が長い間低下し、浅瀬のサンゴは外気にさらされる羽目に。これで死滅したサンゴも多いという。人為的な影響を受けにくい絶海の孤島でも、気候変動に脅かされる事態になったと、研究者は嘆いている。そんなロード・ハウ島でも、深いところにある大部分のサンゴは無事だというので、ホッとしている。

左は白化したサンゴ、右は低潮で干上がるサンゴ(ナショジオメルマガより)

 

7/12 夕方のNHK首都圏ネットワークで、江戸川区の金魚を取り上げた。金魚養殖が盛んだった江戸川区で、現在は2軒のみという話や、金魚の種類が紹介された。その後、カメラは金魚関連グッズの店に移動したのだが、その店長が知り合いだった。サラリーマンから写真家になったころ、ヒマな時期だけ観賞魚雑誌の編集の手伝いをしたのだが、そのときの編集長・大野成美氏だ。風の便りで、異動があったりして退職したのは知っていたが、好きな金魚グッズに囲まれて幸せそうだった。

夕方のニュースに出演の大野成美氏(首都圏ネットワークより)

 

7/13朝放送のテレビ朝日「旅サラダ」で、神戸須磨シーワールドから中継があった。6月にリニューアルしたばかりで、見ごたえありそうな展示になっている。以前の神戸市立須磨海浜水族館には2回行っているが、前から比べると、すべてにおいて立派になっている。資金の面で疑問に思ったら、水族館やホテル、レストランなどの事業は民間企業で、敷地の須磨海浜公園は神戸市の所有のため、官民一体となって須磨海岸の整備をしたとのことで、メデタシ、メデタシ!

シャチが観えるブッフェレストランもある(須磨シーワールドHPより)

 

 

日本で見られるゴンべ類(2)

サンゴ礁域でよく見られるのがメガネゴンべだ。目のところに楕円形の模様があることでこの名が付いた。体の色は個体によって違いがある。サンゴの上に乗っていることが多く、最も好んでいるのはハナヤサイサンゴだ。移動中に休むときは、別のサンゴにも乗る。

イボハダハナヤサイサンゴに乗って見張りをするメガネゴンべ(座間味)

 

ホシゴンべも前種と同じ生態で、顔に褐色の斑点が無数にあるため、この名が付いた。本種も個体によって体色に差がある。やはりハナヤサイサンゴが好みだが、メガネゴンべほど執着はない。

球状のサンゴに乗るホシゴンべ(座間味)

 

ヒメゴンべはミナミゴンべとよく似ているため、以前は混同されていた。違いは尾ビレの斑点で、ミナミゴンべにはなくて本種にはある。目の後方の目玉模様も本種は単に丸い模様に過ぎない。

イボハダハナヤサイサンゴで休むヒメゴンべ(座間味)

 

ベニゴンべはゴンべ類の中で最も警戒心が強い。したがって、サンゴから外に出ることはない。やはりイボハダハナヤサイサンゴが好みで、複数で暮らしている。

警戒心が強いベニゴンべ(座間味)

 

ゴンべ類は全長10cm前後のものが多く、全体的に小型だが、イソゴンべは25cmになる。写真の個体は20cmくらいだったが、それでもカサゴ類かと思ったくらい。比較的浅くて波浪が激しい場所に生息するが、生息数はあまり多くないため、出会ったらラッキーと思ってよい。

波が荒いところを好むイソゴンべ(座間味)