大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

サンゴの形で海がわかる  

サンゴにはいろいろな形がある。よく見るのはテーブル状や枝状、塊状などで、種によっても、生息環境によっても違った形になるようだ。そこで、サンゴの形でどのような環境の海なのかを見てみよう。まずはこのサンゴ。テーブル状サンゴが一面に広がっているが枝状サンゴはない。こうした環境は、波があることを示している。島の北西側の海岸で、冬季に季節風が吹くため大波が押し寄せ、枝状サンゴは生育できない。テーブル状サンゴも背が低くなり、波の抵抗を抑える形になる。

季節風で波が来る海底のサンゴ(座間味)

 

枝状サンゴとテーブル状サンゴが混在する海は、内湾で台風以外は比較的穏やかといえる。潮流も適度にあるため、サンゴにとっては良い環境のようで、魚たちも隠れ家に利用できる。

枝状サンゴといろいろなサンゴがまじる海底(座間味)

 

長く伸びた枝状サンゴがある海底は、内湾のさらに奥の入江。波はほとんどなく、潮の流れも緩やか。栄養分も豊富で太陽光も届くので、生育環境は良いようだ。

長く伸びた枝状サンゴのクロマツミドリイシ(奄美)

 

礁湖に生息するアオサンゴで、上が平らになっている。引き潮になると水面はこの位置になるので、海水がないと生育できないということがわかる。こうしたサンゴをマイクロアトールという。

アオサンゴのマイクロアトール(石垣縞・白保)

 

島と島の間にある水路の水深約15mに群生するテーブル状サンゴ。波はあるものの、深いので影響は少ない。潮流が速いので、複雑な形のサンゴは生育できない。枝状サンゴも浅いところを好むので、見られない。サンゴは条件さえそろえば逞しく生育するが、か弱い部分も持ち合わせているので、環境を悪化させないようにしなければならない。

やや深い水路に群生するテーブル状サンゴ(座間味)

 

ヤマブキスズメ レアな産卵場所

スズメダイ科のヤマブキスズメダイは全長約15cmになり、奄美大島以南の西部太平洋に分布している。外洋に面した礁縁付近に生息し、産卵のときはヤギ類やウミカラマツ類を利用する。

ムチカラマツに産んだ卵を守るヤマブキスズメダイ(コモド)

 

ウミカラマツ類やヤギ類は潮流の速いところに生育するので、ヤマブキスズメダイは卵には好環境と考えてのことだろう。ただしそれらの生物が生きている部分には産卵できないため、表面をはみ取る必要がある。そうしなければ、生物が拒否反応するからだ。

オオイソバナとヤマブキスズメ(座間味)。エダムチヤギとヤマブキスズメ(伊江島)

 

これまで紹介したのがよく利用するものだが、すごくレアな場合もある。あるときコモドで平たいものに産み付けた卵があり、親が保護していた。どうやら葉っぱのような形のカイメンのようだ。どうしてこれを選んだかはわからないが、数年後にこのポイントで同じ状況を見ている。おそらくこの場所のヤマブキスズメダイは、これを選ぶことによる何か新たなメリットを見つけたのだろう。

カイメンに産んだ卵を保護するヤマブキスズメダイ(コモド)

 

さらに別のとき、やはりコモドでサンゴの根元に産みつけた卵を親が守っている場面に遭遇した。サンゴはそこら中にあるので、利用しようとすれば簡単だが、そうしなかったのには理由があるのかもしれない。近縁のクラカオスズメダイがよく利用するので、競合を避けるためだろうか。理由はともかく、サンゴに産むというのはとてもレアなことで、当然ながら初めて見た。

サンゴの根元に産んだ卵を守るヤマブキスズメダイ(コモド)

 

これまでは卵の産卵場所はいずれも生物だったが、そうでないところに産んでいたこともあった。アンダマン海クルーズでのとき、沈船にヤマブキスズメダイがいたので近寄ると、なんと鉄枠に産みつけた卵を世話していた。信じられなかったが、確かに卵があり、親が守っていた。何がそうさせたのかは、未だわからない。生物以外に産卵するとは前代未聞。超レアだ。

沈船の鉄枠に産んだ卵を世話するヤマブキスズメダイ(アンダマン海)

 

オニヒトデの天敵有力候補

サンゴを食べるオニヒトデの天敵はホラガイ。しかしホラガイは貝殻が珍重されているため、生息数は多くない。そのうえ他のヒトデもエサにするし、1匹食べると満腹が長く続くので、オニヒトデが大量発生した場合はお手上げになってしまう。

オニヒトデを食べるホラガイ(奄美)

 

奄美や沖縄でオニヒトデが大量発生したことは何度もあるが、現地ダイビングサービスのスタッフはそのたびサンゴを守るため、オニヒトデ退治に勤しんだ。お客をガイドしているときも、オニヒトデを見つけるとステンレス製の指示棒やナイフで刺し、退治していた。そうすると臭いに引き寄せられていろいろな魚がやって来る。その中でオニヒトデを食べたのはサザナミフグとモヨウフグだ。とはいえ、トゲには毒があるため刺されるのは嫌なようで、裏返しになったときしか食べなかった。

オニヒトデを食べるサザナミフグ(座間味)。右はモヨウフグ(奄美)

 

オニヒトデを指示棒で刺すと、サザナミフグやモヨウフグが近寄って来るが、刺しただけでは丸まってしまうため、トゲが邪魔して食べられない。オニヒトデを弱らす必要があるので、人の手を借りなければならない。

サザナミフグが近寄るが、丸まるので食べられない(奄美)

 

ところが、7/11にEテレで放送された「地球ドラマチック~サンゴの楽園 トゥアモトゥ~」で、ゴマモンガラがオニヒトデを食べていた。しかも誰からも手助けされずにだ。これは画期的といえよう。

オニヒトデを食べるゴマモンガラ(「地球ドラマチック」より)

 

食べ方は、トゲに刺されないよう気をつけながら、くわえてひっくり返したり、何度も噛みついたりして弱らせてから食べる。番組の撮影地はタヒチだったが、日本のゴマモンガラはまったく興味を示さなかったので、海域の差なのだろう。日本のゴマモンガラにもオニヒトデの食べ方を教えることはできないのだろうか。最先端技術を使えば叶えられそうだ。そしてオニヒトデの新たな天敵になってもらいたい。

オニヒトデを食べるゴマモンガラ(「地球ドラマチック」より)

 

 

 

魚のファッションショー 

猛暑があれほど嫌だったにもかかわらず、涼しくなるとちょっぴり寂しくなるのはなぜだろう。それはさておき、芸術の秋ということで、魚の〝衣装〟ともいうべき体色・斑紋に着目してみよう。どうしてこんな模様になったのか、秋の夜長に考えてみるのもよいのでは…。

前衛画家の作品をまとったようなニシキテグリ(コモド)

 

ヒレナガヤッコの模様も、未完成な前衛作品のようでおもしろい。

ヒレナガヤッコのオス(ニューカレドニア)

 

ワヌケヤッコの青い線は、絶妙なバランスで縞模様を形成している。しかも、下に行くに従ってカーブが強くなっている。コンピューターで計算したような曲線がどうしてできたのか、不思議でしかたがない。

ワヌケヤッコ(プーケット)

 

」」クダゴンベは1色にもかかわらず、格子模様が絶妙。この模様は宿主の色に似る傾向がある。リュウキュウイソバナに住むこの個体の明るい赤は、とても温かみがある。

クダゴンベ(座間味)

 

ヒレナガハギは地味ではあるが、伝統的な織物を連想させる。縞模様の濃淡、細い線や点などが実に見事に調和し、見れば見るほど和服の趣が感じられる。

ヒレナガハギ(座間味)

 

ASIA DIVE EXPO JAPAN 2026

9月25日(金)より東京ビッグサイトにて標記イベントが開催された。このイベントは、朝日新聞社主催の「GOODLIFE FAIR」の会場の一部を借りての開催で、ダイバーにはあまり周知されていない。今回で3回目だが、初日に行ってみたらとんでもないことになっていた。

ASIA DIVE EXPO JAPAN 2026のポスター

 

それは、ダイビング器材メーカーが1社しか出展していなかったことだ。出展していたのはmaresだが、ダイビング器材の展示はなく、商談のスペースのみだった。ちなみにSSIは、アメリカの潜水指導団体で、現在の親会社がmaresということ。また、水中撮影機材メーカーのブースもなかった(海外のseacamが出展しているらしかったが、気づかなかった)。

唯一のmaresのブース

 

それでも楽しみだったのがセミナーだ。三陸ボランティアダイバーズの佐藤寛志氏の「変わり行く海への適応~海の森を育てる~」や岡本美鈴選手の「青い宇宙へ。カナヅチだった私が水深100mで見つけたもの」。

温暖化による海水温の上昇などで海藻が減少し、それらをエサとするウニやアワビなども激減した三陸。佐藤氏らは研究者と協力し、藻場を再生する取り組み行い、成果を上げているという。こうした取り組みは一般の人たちにも参加できる仕組みを取り入れたようで、地元の人だけではなく、観光客にも支持されているようだ。

佐藤氏と岡本選手のセミナー用ポスター

 

岡本選手は、海に親しむきっかけがイルカだったこと、小笠原で初めてイルカを見たことなどからしだいにスノーケリング、フリーダイビングの選手へと進んで行った話をされた。自己記録は水深100m。昨年はマスターズ大会の50代部門で84mの世界記録を出している。現在は真鶴を拠点に競技のトレーニング、スクールでの指導などを行っているほか、真鶴の観光大使も務めているという。

岡本選手とは15年前に伊豆七島の利島でイルカの撮影でご一緒し、その翌年は座間味でも一緒に潜っている。今後も元気で活躍されることを願っている。

岡本選手のセミナー

 

ゴーグルをつけて海中世界が体感できる、VRでのデモンストレーションも行われていた。そのほかにも体験ダイビングを扱うブースもあった。器材メーカーやダイビングサービスの出展が少なかった理由は、おそらく開催時期だと思う。次回はどうなるか、見ていきたい。

VRの体験ブース

 

 

サンゴへの依存度 超高い魚

サンゴ礁を形成するサンゴは、いろいろな生きものにとって必要不可欠なもの。サンゴのポリプや粘液を栄養にしている生きものもいれば、サンゴのすき間を隠れ家にしているものもいる。その中で、サンゴのすき間からめったに出ない魚を取り上げてみたい。まずはハナヤサイサンゴに住むダンゴオコゼ。すき間からちょっと見えただけでもうれしくなる。当然ながら、とても撮影しにくい。

ダンゴオコゼ科のダンゴオコゼ(奄美)

 

ゴンべ科のベニゴンべもハナヤサイサンゴのすき間に住んでいて、やはりめったに出てこない。体色が鮮やかなので、もっと見せてほしい。

ベニゴンべ(座間味)

 

フサカサゴ科のカスリフサカサゴもハナヤサイサンゴのすき間に暮らす魚だ。ダンゴオコゼよりかは警戒心が強くないため、撮影は比較的しやすい。

カスリフサカサゴ(座間味)

 

ハゼ科のコバンハゼも枝状サンゴのすき間に暮らし、外に出ることはほとんどない。比較的撮りやすいところにいる個体を見つけた。

コバンハゼ(奄美)

 

テンジクダイ科魚類の多くもサンゴのすき間を利用しているが、そのほとんどは隠れ家としてなので、外に出ていることも多い。ところが、クロオビアトヒキテンジクダイはめったに出ない。サンゴの上に浮かんでいる姿も見た覚えがない。

こうしたサンゴへの依存度の高い魚たちは、今後サンゴが減少すれば当然姿を消す運命共同体なのだ。

クロオビアトヒキテンジクダイ(コモド)

 

 

タカサゴスズメの生態

スズメダイ科のタカサゴスズメダイは全長約12cmになり、伊豆諸島以南の西部太平洋、インド洋に分布している。体色は灰色がかった茶色で、腹部辺りは黄色味が強い。頬に黒い帯が入っているのが特徴で、その他にも尾ビレ先端に黒斑がある。生息数は多くないようで、海外で見た覚えはない。

タカサゴスズメダイ(奄美)

 

国内でも出会った記憶はあまりなく、繁殖期にしか見ていないような気がする。5月から8月ごろまでが繁殖期で、体の色が黒ずむ個体もいる。オス同士の縄張り争いが見られるのもこの時期で、にらみ合いを何度もするのだが、噛み合いにまで発展する場合もある。ただし、相手を傷つけたりすることはないようで、儀式的な意味合いがあるのかもしれない。

タカサゴスズメダイの縄張り争い(座間味)

 

オスは転石帯やガレ場を産卵床にし、メスを誘って産卵させる。オスは卵の世話をすると共に、複数のメスを誘って産卵させる。こうした行動は、メスにとっても確実に子孫を残すためには必要なことなのだろう。

産卵するタカサゴスズメダイ(水納島)

 

高知県の一切(いっさい。柏島の対岸)で9月に潜ったとき、タカサゴスズメダイが産卵している場面に出会った。こんな時期にと思ったが、水温は27℃近くあったので、可能だったのだろう。

産卵中のタカサゴスズメダイ(高知・一切)

 

「ダーウィンが来た!」のロケでチンアナゴを観察していたら、タカサゴスズメダイが来て砂底に着底し、産卵床にしようとする動きがあった。一度中層に戻ったが、再び砂底に。結局〝やじ馬〟がたくさんいる場所は適所ではないと判断したようで、その後来なくなった。そのため産卵は見られなかったが、砂底でも産卵することがあると知ったのだった。

チンアナゴのそばに産卵床をつくるタカサゴスズメダイ(座間