大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

キンセンハゼの分布

ハゼ科のキンセンハゼは約5cmと小さい。現在の分布は奄美大島以南の西部太平洋、インド洋になる。最初に見たのは座間味島で、80年中ごろだった。サンゴ礁の岩陰でホバリングしていて、近寄ると遠ざかる。和名の由来となった体側の黄色の線が特徴で、他にも長く伸びた第1背ビレや第2背ビレにある目玉模様も印象深い。

キンセンハゼ(奄美

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86年に発売された魚類図鑑『生物大図鑑 魚類』(世界文化社)のキンセンハゼの分布は、奄美大島以南西表島までとなっていて、まるで固有種のように書かれていた。さすがに日本固有種ではないと思った。

あくびをしたキンセンハゼ(奄美

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87年に『世界の海水魚』(東海大学出版会)が出版され、その中にキンセンハゼの近縁種ラインフォーズゴビーが載っていた。これを見たとたん、これがキンセンハゼの「インド洋版」と勝手に思ってしまった。チョウチョウウオ類で似ているけど別種というのがよくあったため、同じケースだと思い込んだのだ。

ラインフォーズゴビー(ラジャアンパット)

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その後インド洋のモルディブで、キンセンハゼを見てビックリした。改めて分布を調べたら、キンセンハゼはインド洋から太平洋に分布。ラインフォーズゴビーは、インド洋には分布しないことがわかった。以来、先入観で判断するのはよくないと悟り、気をつけるようにしている。

キンセンハゼ(モルディブ

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