大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ネオンテンジクダイについて

テンジクダイ科のネオンテンジクダイは、奄美大島以南の西部太平洋に分布し、主に穏やかな内湾に生息している。全長約4cmで体は透明感があり、吻から尾柄部にかけて黒線がある。そして尾柄部の赤い斑紋が最大の特徴。

ネオンテンジクダイ(奄美 `06年)

 

本種を取り上げた理由は、97年発行の『日本の海水魚』(山と渓谷社)を見たら、分布が奄美大島以南、フィリピンとなっていたからだ。この図鑑より前に発行された海外の図鑑の分布は、インドネシアから南日本だった。それで気になり、改めて調べみた。

本種が最初に日本の図鑑に掲載されたのは『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会、84年)。分布は石垣・西表、フィリピンだった。

ネオンテンジクダイの初撮影(西表島・網取湾 `86年)

 

その後90年代になってから横須賀市自然・人文博物館などが奄美で魚類の調査・研究を行った関係で、本種の生息が確認され、分布が拡大された。奄美で本種が見られるのは大島海峡にある入江で、岩陰やサンゴのそばなどに群れていることが多い。不思議なのは、沖縄本島慶良間諸島では見た覚えがないこと。海外の熱帯海域から分布を広げてきたことは容易に推測できるが、間を抜かして奄美に定着したのはなぜなのだろう。

リュウキュウイソバナのそばで群れる(奄美 `07年)

 

海外ではマレーシアのマブール、インドネシアのラジャアンパットなどで出会い、撮影している。何度も行っているコモドでは、なぜか出っていない。

ネオンテンジクダイ(マブール `03年)

 

本種は口内保育を行うことでも知られている。繁殖期の初夏にはオスが卵をくわえている姿を見ることができる。この写真の個体がくわえているのはピンクなので、産みたてということがわかる。卵の発生が進むと徐々に透明になる。

卵をくわえたオス(奄美 `14年)