大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

愛でタイ

古来、日本人に最も親しまれている魚は、マダイだろう。お祝いやお祭りには必ず尾頭付きが飾られる。「めでたい」という語呂合わせだけではなく、体型や色合い、味もよいことが人気の理由で、魚の王様と形容されることも多い。マダイはタイ科マダイ属で、同属は世界に6種だが、日本にはマダイ1種のみ。それなのに○○ダイという魚は数多く、そのほとんどが別の科だ。それだけマダイは憧れの魚といえる。○○銀座と似ている。

マダイ(大瀬崎)

 

マダイの分布は北海道~九州、東シナ海南シナ海琉球列島には分布していないが、尖閣諸島では釣りで漁獲されるらしい。図鑑によると全長1mになるようだが、実際に出会うのは、2060cmのものが多い。

30cmの若魚(大瀬崎)

 

水産価値が高いマダイは、種苗生産が盛んだ。養殖のことだが、水槽内で産卵・ふ化という「完全養殖」はまだ確立されていないため、人工ふ化させた稚魚を水槽で育て、その後生け簀に移し、基準の大きさになったら出荷する、という方法だ。以前、海の資源回復のため稚魚を放流している、という話を聞いたことがある。幼魚や若魚は藻場や砂地を行動域にしているので、小型のマダイを見たとき、人工的に育てられた個体なのか考えたことがあった。

全長約15cmの若魚(大瀬崎)

 

マダイの特徴はピンク色の体に水色の水玉模様が輝いていること。老成すると体色が黒ずんで水色模様も消えてしまう。桜の咲く時期に捕れるマダイを「桜鯛」という。しかし、ハタ科にサクラダイという種がいるので、紛らわしい。漢字なら多少は判別しやすい。

ホンソメワケベラのクリーニング中(大島)

 

マダイの生息数は、太平洋側より日本海側のほうが多い。また、大型個体もたくさんいる。昔佐渡で約80cmの大型個体に出会ったことがある。数mそばに来てこちらの様子を見ている。移動するとついてくる。写真を撮ろうとするとすーっと遠のく。結局写真は撮れず、馬鹿にされたような不思議な体験だった。

60cmくらいの群れ(佐渡