大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ミノカサゴについて

フサカサゴ科のミノカサゴは北海道~種子島東シナ海朝鮮半島南部に分布している。全長約25cmで、岩場や砂地などに生息している。レースのような胸ビレを揺らしながら優雅に移動する姿はとても美しい。動きがゆっくりなので、撮りやすいのもうれしい。

ミノカサゴ柏島

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ミノカサゴとよく混同されるのがハナミノカサゴだ。よく似ているのでしかたがないが、外見での違いはいくつかある。最もわかりやすいのが尾ビレで、本種の尾ビレには模様がない。一方ハナミノカサゴのそれには細かな黒点が入っている。

ミノカサゴ錦江湾

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次は胸ビレ。めいっぱい広げることは少ないのでわかりにくいが、本種の胸ビレは12本を除いて他は膜でつながっている。モモンガのようだ。一方のハナミノカサゴの胸ビレはそれぞれ独立している。

左はミノカサゴ柏島)、右はハナミノカサゴ(座間味)

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本種の顔付近の縞模様は途中までで、下あごは白いのも特徴。

ハナミノカサゴと混同されていた大きな理由に、分布も挙げられる。以前の図鑑(例えば山と渓谷社の『日本の海水魚』)では、北海道南部以南の太平洋、インド洋と南限があいまいだった。最新の図鑑『日本魚類館』(小学館)では、先述のように南限を種子島とし、さらに東アジア固有で温帯域に適した種と記されている。

とはいえ、ハナミノカサゴの分布の北限は房総半島なので、両種が混在する場合もある。過去の写真を調べてみたら、柏島錦江湾は両種がいたが、本種は少なかった。奄美や沖縄はミノカサゴは見当たらなかった。

温帯域固有のミノカサゴ(大瀬崎)

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しかし、ミノカサゴみたいでもハナミノカサゴの特徴がある個体も見受けられた。バリエーションの範囲内なのか、それとも交雑種なのかは知る由もないが、同じ海域に両種が生活していれば雑種ができても不思議ではない。また、海外の図鑑にはミノカサゴとそっくりな Pterois milesP.tusselii  がいるのでかかわっているのかもしれない。今後の研究を待ってみたい。

胸ビレが独立している個体(佐賀・玄海海中公園)

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