大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

謎多きウミテング

奇妙な姿をした魚は結構多い。ウミテング科のウミテングもその一つ。大きさは約8cmで、相模湾以南の太平洋、インド洋に分布し、主な生息場所は砂底。移動するときは胸ビレを広げ、細長い腹ビレを使って海底を這うように進む。最初に出会ったのは座間味島だった。温帯域の魚と思い込んでいたので、ちょっと驚いた。また、大きさが10cmくらいあったと記憶している。

最初に出会ったウミテングで、大きかった(座間味、82年)

 

ウミテングは砂底やガレ場に生息しているため、海底にまぎれるような保護色をしている。したがって見つけにくい。ところが、個体によって体色は多様で、背面のみ白いタイプや全体的に赤っぽい個体も見られる。

白い背面の個体(伊豆大島)と赤っぽいタイプ(柏島

 

海で出会うウミテングは、だいたい7cm前後。座間味で出会ったものは特別大きかった。かなり前に鹿児島県の錦江湾で約5cmぼ幼魚に出会った。出会った中で最も小さかったように思う。

全長約5cmのウミテングの幼魚(錦江湾

 

ウミテングは伊豆半島などの温帯域でよく見られるため、熱帯域にはいないと思っていた。ところが沖縄や海外のサンゴ礁域でも見られたので、かなり分布が広いことがわかった。どのようにして分布を広げたのか、謎である。英名はリトル・ドラゴン(小さな龍)やシーモス(海の蛾)などと付けられている。

熱帯海域のウミテング(ラジャアンパット)

 

ペアでいることが多いウミテング。よく見ると吻の先の形が異なる。片方はヘラ状で、もう片方が棒状なのだ。おそらく雌雄による違いだろうが、図鑑にはその説明が載っていない。また、知る限り本種の繁殖行動は不明。比較的身近な魚にもかかわらず、謎は多い。

ウミテングのペアだが、向きは反対(柏島