大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

地域変異から別種へ・モンツキベラ編

ベラ科モンツキベラは、相模湾以南の西部太平洋に分布している。以前はインド洋も分布に含まれていた。伊豆半島で見られるのは幼魚。もともとサンゴ礁域の魚なので、成魚は紀伊半島あるいは四国以南になる。モンツキベラの和名の由来は、腹ビレや尻ビレの黒斑と思われる。全長約25cmになる。

モンツキベラの成魚(座間味)

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幼魚の模様は成魚と異なるが、ちゃんと「モン」はある。ヤギ類などのそばにいることが多い。また、幼魚期は他の魚の体をクリーニングする習性があることが知られている。

4cmほどのモンツキベラの幼魚(座間味)

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伊豆ではヤギ類のそばや岩穴などに、23尾でいることもある。運がよければ、魚をクリーニングする姿が見られる。

マツバスズメダイをクリーニング(富戸)

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かつてはインド洋や紅海に分布するものは、地域変異とされていた。違いは「モンツキ」が黒ではなくて赤い。2006年にモンツキベラの学名が海外の学者によって変更された。ということは、地域変異とされていたものが別種に、そして太平洋のものは新種になったのだろうが、海外の学者が変更したので、まったく話題にならなかった。

インド洋のモンツキベラ(プーケット

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ところで、インドネシアのコモド諸島の南エリアは、太平洋とインド洋の境界になる。したがってインド洋固有種がたまに見られる。モンツキベラもインド洋タイプが現れるのではと期待しているが、決まって太平洋タイプばかり。一度くらいは出会ってみたいのだが…。

通常のモンツキベラ(コモド)

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