大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

フタスジタマガシラの地域変異

イトヨリダイ科のフタスジタマガシラは約20cmで、高知県以南の西部太平洋、東部インド洋に分布している。口から背にかけてカーブする2本の筋があり、和名の由来と思われる。サンゴ礁域に単独か数尾であまり動かずにいる。
フタスジタマガシラ(座間味)

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幼魚は体の上部が黄色で、3本の黒い帯が口から尾にかけて入っている。また、背ビレには黒斑がある。特徴的な斑紋から、ヒゲニジギンポの擬態と考えられている。毒牙があるギンポに似ることで、捕食されにくいという。しかし、ヒゲニジギンポは日本では少ない。
約4cmの幼魚とモデルのヒゲニジギンポ(座間味とコモド)

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モルディブに色合いが異なるフタスジタマガシラがいる。地域変異か別種か悩んでいたが、2年前発刊の『日本魚類館』(小学館)では地域変異となっていた。その地域に生息するヒゲニジギンポ属が関係しているらしい。
体側はほぼ白のフタスジタマガシラ(モルディブ

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幼魚も成魚のように白い体で、背中と背ビレに黒い帯がある。ヒゲニジギンポ属のスミスズサーベルトゥースブレニイに擬態していると考えられている。
約5cmの幼魚とスミスズサーベルトゥースブレニイ(モルディブf:id:youjiuo:20200305211732j:plain

 

フィジーには黄色いフタスジタマガシラがいる。成魚には出会っていないが、若魚は撮影したことがある。幼魚もおそらく全身黄色で、色彩変異のオウゴンニジギンポに擬態していると思われる。どの海域でもフタスジタマガシラはヒゲニジギンポ属と関係していて、不思議でしかたがない。
フタスジタマガシラの若魚とオウゴンニジギンポ(フィジー

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