大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ヒゲニジギンポの生態

イソギンポ科ヒゲニジギンポ属はヒゲニジギンポ、オウゴンニジギンポ、カモハラギンポ、サツキギンポ4種が日本に分布している。同属は、毒牙を持っていることが特徴。そのため天敵は少ないとされている。ヒゲニジギンポは全長約7cmで、奄美大島以南の西部太平洋に分布しているが、日本での生息数は多くない。幼魚は伊豆半島での記録がある。

ヒゲニジギンポ(コモド)

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本種はインドネシアやフィリピンでは比較的多い。気が荒いようで、オス同士が出会うと、縄張り争いやメスを巡っての争いがよく行われる。その行動パターンは、にらみ合い、体の大きさを比べる側面誇示で、それでも決着がつかなければぶつかり合うこともある。

ヒレを広げてにらみ合うヒゲニジギンポのオス(リロアン)

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繁殖行動を初めて観察したのはマブールで、24年前のこと。水色がかった婚姻色になったオスが、体を上下させながらゆっくりメスを自分の巣穴に誘導していた。オスは巣穴に入って場所を教え、一旦出てメスの様子を見る。メスは気に入らなければ去り、気に入れば巣穴に入って産卵。メスが出るとオスが交代し、受精させる。この観察がきっかけで、イソギンポ科の繁殖パターンを知ることができた。

産卵を終え巣穴から出るメス(左)とオス(ラジャアンパット)

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先述したように、本種は天敵が少ない。そのような場合、擬態する魚が現れても不思議ではない。テンジクダイ科のミミックカーディナルフィッシュだ。確かによく似ているが、イソギンポ科は背ビレが一つなのに対し、テンジクダイ科は二つなので見分けがつく。

ミミックカーディナルフィッシュ(コモド)

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本種は白い体に黒い帯が数本入り、体前部が黄色いのが特徴。しかし日本に生息するものは、黄色みがないタイプが多い。海外では白いタイプは見られないので、日本のものは地域変異といえるだろう。

白いタイプのヒゲニジギンポ奄美

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