同種でも、海域によって模様などが異なる場合がある。地域変異という。分類学の進歩に伴い、地域変異だったものが別種になった例が多くある。ここではオグロトラギスを見てみよう。トラギス科のオグロトラギスは、琉球列島、西部太平洋の熱帯海域に分布し、砂地やガレ場、転石帯に生息している。大きさは20cmになる。
オグロトラギス(座間味)
白っぽい体に茶色の斑紋が全体にある。また、尾ビレの黒い斑紋が特徴で、和名の由来になっている。体にある茶色の斑紋は、個体によって多少違いがある。警戒心はまったくないようで、他のものを撮影していると近寄ってくる。
正面のアップも撮るのは簡単(奄美)
単独かペアでいる。とはいえ、オスとメスの違いはほとんどない。オスのほうがやや大きいようだ。
オグロトラギスのペア。ヒレを広げてオスがアピール(座間味)
太平洋のオグロトラギスは、オスとメスの区別はつかないが、インド洋と紅海に生息するオグロトラギスのオスの頬には筋が数本ある。この筋模様で地域変異とされていた。ちなみにメスにはない。
手前がオグロトラギスのオス。頬に筋がある(紅海)
2007年、地域変異とされていた太平洋とインド洋、紅海のオグロトラギスは別種になった。それまでの学名はインド洋タイプに引き続がれることに。すなわち、太平洋のオグロトラギスは新種になったのだ。そして、太平洋を意味する学名が付けられた。
13年前新種になったオグロトラギス(奄美)