大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ハナミノカサゴの生態

フサカサゴ科のハナミノカサゴは全長約30cmになり、房総半島以南の太平洋、東部インド洋に分布している。ミノカサゴとよく似ているが、尾ビレで見分けがつく。本種の尾ビレには小さな黒点が無数にあるが、ミノカサゴにはない。警戒心が強くないうえに泳ぐ速度も遅いので、レンズを向けられる機会は多い。体色変異で、黒い個体もよく見られる。

ハナミノカサゴ。小枠は黒い個体(奄美

 

幼魚の体色は半透明で、体側に黒の縞模様がある。また、ヒレのつけ根には丸い模様があるのが特徴。

全長約4cmのハナミノカサゴの幼魚(柏島

 

ハナミノカサゴは主に小魚をエサにしている。群れに近寄って水ごと吸い込んで捕食する。とはいえ、そう簡単にはいかない。ケガや病気などで弱ったものしか食べられないだろう。

デバスズメダイを狙うハナミノカサゴ(座間味)

 

本種は夜行性といわれているが、昼間でもキンメモドキなどが群れている所で、浮遊しながらゆっくり追う姿も見られる。だが、捕食の瞬間は見たことがない。一方、同じ場所で、待ち伏せしている個体もたまにいる。おそらく、このほうが捕食しやすいのではないだろうか。こうした行動は、同種同士が協力して行っている、という研究者もいる。

小魚を追うハナミノカサゴ待ち伏せする個体(座間味)

 

あるとき、ハナミノカサゴの背後からヘラヤガラが来た。他の魚の上に乗り、油断している獲物を捕食する「隠れみの」をしようとしたようだ。ところが、一瞬ためらって、そのまま通り過ぎてしまった。ハナミノカサゴの背ビレのトゲに恐れをなしたのだろう。

「隠れみの」をしようとしたヘラヤガラ(座間味)

 

わりあい深い砂地を移動しているとき、ワモンダコが岩陰から出てきた。辺りを気にしながら移動しようとしているようだ、すると、どこからともなくハナミノカサゴが集まってきた。タコが動くと隠れていた小魚が飛び出すのを知っているのかもしれない。それにしても、タコの行動を観察しているというのは驚きで、かなり賢いに違いない。

ワモンダコを取り巻くように集まったハナミノカサゴ(座間味)