大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ハナミノカサゴの皮弁の謎

 フサカサゴ科のハナミノカサゴは、房総半島以南の太平洋、インド洋に分布。全長約35cmに達し、岩礁サンゴ礁に生息する。主に小魚などを捕食する。ミノカサゴとの違いは、尾ビレに黒斑があること、眼の上の皮弁(眼上皮弁)が長いことで区別できる。眼上皮弁は個体によってさまざまで、なぜなのか気になっていたが、言及している図鑑はなかった。だが、2年前発刊の『日本魚類館』(小学館)には詳しく記されていた。若魚はムチ状に長いとある。
ムチ状に長い皮弁のハナミノカサゴの若魚(座間味)

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成魚になると、眼上皮弁の上部は葉っぱのような形になり、中に目玉模様が二つ現れるとか。確かに葉っぱ状の中に目玉模様が二つのものもいたが、写真を調べたら1個体のみだった。
小魚を待ち伏せ。皮弁に目玉模様が二つ(座間味)

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個体によっては目玉模様が一つしかないものもがわりあい多かった。
目玉模様が一つしかない個体(コモド)

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また、目玉模様ではなく、白い斑紋の個体もいたり、黒い点があるだけなど、個体によってだいぶ異なる。おそらく成長の段階で変化するのか個体変異なのだろう。
皮弁の模様が個体によってさまざま(左は座間味、右は石垣)

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いろいろなバリエーションがある皮弁だが、老成するとなくなってしまう。図鑑には「退縮」すると記されていたが、どういう意味だろう。退化して縮むのだろうか。それとも鹿の角のように時期が来ると落ちるのだろうか。いずれにしても老成魚は眼上皮弁がなく、体側の縞模様が密になる。
35cmくらいあるハナミノカサゴの老成魚(コモド)

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眼上皮弁が片方は長く、もう片方は短い個体もいた。同じような写真が2枚出てきたので、老成すると片方から縮むか折れるようだ。鹿の角のように、ポトリと落ちるのではないことがわかっただけでもスッキリした。
眼上皮弁の長さが異なる老成魚(奄美

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