大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

尾ビレの色の意味(シマタレクチベラ編)

ベラ科のシマタレクチベラは全長約80cmになり、伊豆半島以南の中・西部太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域のガレ場や転石帯に生息し、40cm前後の個体が多い。海底の砂利などの中に潜む小動物をエサにしているので、砂ごと吸い込んで捕食する。ヒメジ類、特にマルクチヒメジと行動を共にすることがよくある。

シマタレクチベラのメス(座間味)

 

シマタレクチベラは、成長に伴って尾ビレの色が変わる。幼魚期は黄色で、しばらくは黄色のままだが、徐々に濁りが入ってきて黒になってくる。

全長約6cmの幼魚(奄美

 

シマタレクチベラが性転換するかは確認されていないが、おそらくするものと思われる。本種全体の尾ビレの色彩パターンは①黄色 ②黄色と黒が混じった色 ③黒 ④両端が黄色で間が黒、の4タイプある。当初は①と②がメスで、③と④がオスと思っていた。ところが、繁殖の場面を見たときに、黒の尾ビレもメスとして参加していることを確認した。

尾ビレが黒いメス(座間味)

 

オスの尾ビレは前述したように④の色合いで、さらに顔の色も派手。もちろん体もひと回り大きい。繁殖形態は、縄張りに56尾のメスを従えるハレムを形成する。

尾ビレも顔もまさしくオスのシマタレクチベラ(座間味)

 

オスの体色・斑紋をした小型の個体は見当たらないので、尾ビレが黒いメスが性転換してオスになるものと思われる。身近な魚なれど、まだまだ謎だらけだ。

マルクチヒメジと併泳する、オスになりかけの個体(座間味)