大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

尾ビレの色の意味(ニジハギ編)

ニザダイ科のニジハギは全長約30cmに達するらしいが、通常は20cmくらいが多い。相模湾以南の西部太平洋、インド洋に分布している。藻食性で、サンゴ礁域の浅瀬に生息している。縄張りを持ち、同じ食性の魚が来ると追い払う。鮮やかな体色が和名の由来だ。尾ビレは素早く泳げる形状で、色は濃い灰色。真ん中に水色のラインがある。

ニジハギ(座間味)

 

ニジハギの行動は、縄張りの見回りをしたり、エサを食べたりしてかなり動き回っている。尾ビレを見ると、水色のラインより外側が白いことがある。

尾ビレが白くなった個体(コモド)

 

昔、ニジハギが縄張り争いで追いかけ合っている場面に遭遇したので撮影した。その画像では、追われている個体の尾ビレが白で、追うほうは灰色だった。したがって、尾ビレが白いのは「降参」という意味かと思った。

縄張り争い。追われるほうの尾ビレが白くなっている(西表島

 

その後インドネシアのコモドで、じっくり観察する機会があった。縄張りを巡って2尾が追いかけ合ったり争うことを数分続けたのだ。そのときの画像を見ると、どちらの尾ビレも白くなったままだ。これで尾ビレが白くなるのは「怒り」の意味で、興奮の度合いが強いことを示していることだとわかった。

ニジハギの縄張り争い(コモド)

 

ニジハギがクリーニングされているときは、体色は黒っぽくなるものの、尾ビレは平常時と変わらず、灰色のままだ。弱肉強食の世界では、平常は「穏やか」「心地よさ」なのかもしれない。

スミツキソメワケベラにクリー二ングされるニジハギ(ラジャアンパット)