コガネスズメダイは伊豆半島周辺で普通に見られることから、ずいぶん前から撮影していた。新種記載されたのは1830年で、インドネシア・アンボンから得られた標本を基に、Heliases analisという学名が付けられた。


80年代後半、座間味の外海に潜ったとき、コガネスズメダイがいるのでビックリした。温帯域の魚だと思っていたからだ。その後も何度か座間味で出会ったが、生息するのは外洋ばかりだった。いま改めてみるとコガネスズメダイではなく、ヒマワリスズメダイだった。

魚類を観察するダイバーが増えるとともに、タイプが異なるコガネスズメダイが存在することが知られるようになった。特にその違いは幼魚では顕著で、体高の低いタイプ、体側は灰色でヒレが黄色いタイプなどがいることが明らかになった(コガネスズメダイの幼魚は大瀬崎、タンポポスズメダイの幼魚はコモドで撮影)。
ヒマワリスズメダイ(ラジャアンパット)

2000年代中ごろから、海外でコガネスズメダイの近似種が数種新種記載された。C.xouthosとC.albicaudaなど。日本でも研究が進み、鹿児島水圏生物博物館・岩坪洸樹、鹿児島大学総合研究博物館・本村浩之両氏が05年にコガネスズメダイを2種に分け、一方の標準和名をヒマワリスズメダイとしたが、学名はコガネスズメダイのC.analisとした。コガネスズメダイにはC.albicaudaと付けた。
数年前より前出の岩坪、本村両氏がコガネスズメダイ類について再調査した。その結果、ヒマワリスズメダイの基準とされた標本はC.xouthosであることが明らかになった。したがって、C.xouthosに適用する標準和名をヒマワリスズメダイとする一方、C.analisは日本初記録になり、新標準和名のタンポポスズメダイと付けられた。
コガネスズメダイ(コモド)

3種の成魚の特徴は、ヒマワリは腹ビレが淡い水色で、背ビレの縁がオレンジ色。タンポポは体側がやや黒っぽい。コガネは尾ビレが白い(白くない個体もいる)。生時、標本ともに尾ビレが白くなるのはコガネだけらしい。