大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

クロハコフグの生態(その1)

ハコフグ科のクロハコフグは全長約16cmになり、伊豆半島以南の西部太平洋、インド洋に分布している。主な生息域はサンゴ礁で、九州以北で見られるのは幼魚と思われる。体色はオスとメスで異なり、メスは黒褐色の地に白点が全体にある。とても警戒心が強く、サンゴのすき間からあまり出ない。オスと比べるとやや小さい。

クロハコフグのメス(奄美

 

オスは背中が黒で白の水玉模様、体側は紺色で黄色の斑点がある。メスほどではないが、やはり警戒心が強い。サンゴの下を伝いながら移動し、海底のエサを口にする。エサは小型甲殻類、貝類、無脊椎動物など。

クロハコフグのオス(奄美

 

幼魚はメスの体色・斑紋と同じで、岩陰などで暮らしている。警戒心が強いため、出会える機会はそう多くない。

全長約5cmの幼魚(柏島

 

ある年の7月、座間味でクロハコフグのオス同士が争っている場面に遭遇した。にらみ合いの後、激しくぶつかり合って浮上していく。体勢を崩されたほうはさらに腹部などをつつかれるが、そのうち反撃してめまぐるしく攻守が入れ替わるため、どっちが優勢かはわからない。結着がついて海底に降りても、しばらくして目が合うと、再びぶつかり合いが始まる。

オス同士の激しい争い(座間味)

 

オス同士の争いは、縄張りを巡ってが理由だ。ところが、メス同士の争いも座間味で観察した。それも1月だ。繁殖期以外に、縄張りを持たないとされるメス同士がどうして争うのだろうか。今でも謎だ。

不可解なメス同士の争い(座間味)