ネズッポ科のミヤケテグリは全長約7cmで、相模湾以南の西部太平洋に分布している。1985年、三宅島から得られた標本を基に新種記載された。学名の種小名には、海洋学者のジャック・モイヤー氏の名が付いている。また、英名もモイヤー・ドラゴネットという。体色・斑紋の変異が多く、近縁種のセソコテグリやヤマドリなどと見分けるのが難しい。
ミヤケテグリのオス(座間味)
新種記載されると、いろいろな海でも生息が確認される場合が多い。本種も例外ではなく、四国や沖縄などで次々と発見された。オスの特徴は第一背ビレが大きく、その中に目玉模様が二つあることだが、求愛以外ではほとんど広げない。一方メスはオスよりやや小型で、第一背ビレも小さい。
ミヤケテグリのメス(水納島)
本種は根のそばのガレ場を行動域にしている。ガンガゼの近くにいる場合もある。
全長約4cmの幼魚(柏島)
奄美でミヤケテグリを見つけ、しばらく観察していたら第一背ビレを広げた。目玉模様が二つあったのでオスであると確認できた。しかしながら近くにメスはいない。なぜ第一背ビレを広げたのかは未だに不明。
背ビレを広げたオス(奄美)
コモド諸島でニシキテグリの繁殖シーンを撮影するため、日没前に潜った。ニシキテグリはもちろん、同属のピクチャードラゴネットや本種も求愛やオス同士の争いが観察できた。コモドのあるポイントでは、枝状サンゴが群生しているところに3種がそれぞれ暮らしているのだ。
メスに背ビレを広げて求愛するオス(コモド)
何度か求愛を繰り返していると、メスも徐々にその気になって来るようで、少しずつ海底から離れるようになる。やがてオスに向かって浮き上がり、オスの胸ビレに乗るようにしてゆっくり上昇し、タイミングを計って放卵・放精して海底に素早く戻る。1尾のオスの縄張りには複数のメスがいるので、メスの数だけ産卵が繰り返される。
産卵上昇を始めるオスとメス(コモド)