大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ニセネッタイスズメダイの生態

初夏は多くの魚の繁殖シーズンに当たるため、例年は必ず海に行っていたのだが…。

ということで、この時季確実に見られる繁殖生態を紹介しよう。スズメダイ科のニセネッタイスズメダイは全長約8cmで、奄美大島以南の西部太平洋に分布している。鮮やかな黄色のネッタイスズメダイ対し、ややくすんだ黄色のため「ニセ」が付いたのだろう。本種の幼魚の背ビレには目玉模様があるが、ネッタイスズメダイにはない。
ニセネッタイスズメダイ。幼魚は約2cm(座間味)

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本種の生息場所はサンゴ礁の転石帯で、繁殖期になるとオスは縄張りを持ち、岩の下を掘って巣穴を作る。巣穴の中の邪魔な小石やサンゴのかけらは、くわえて外に捨てる。
かけらを捨てるオス(座間味)

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巣穴ができるとメスを誘い込んで産卵するのだが、天井や壁など硬い部分に産み付ける。基本的には複数のメスを誘う。一方のメスも、別のオスの巣穴で産卵する。どちらも確実に子孫を残す知恵なのだろう。
卵の世話をしているオスの巣穴にやって来たメス(奄美

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中には自分で巣穴をつくらないで、何かを利用するものもいる。このオスはシャコガイの貝殻を産卵床にしていた。
貝殻に産卵中のオスとメス(奄美

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本種はわりあい気が強く、卵を保護中に近寄ると体当たりしてくる。このときは卵を食べにやって来たウミヘビに対して果敢にアタックしていた。
ウミヘビを追い払うオス(座間味)

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