スズメダイ科のソラスズメダイは全長約8cmになり、茨城県以南の太平洋、東部インド洋に分布している。サンゴ礁域が本来の生息場所だが、分布を北に広げ、今や温帯域でも普通に見られる。体はきれいな青で尾ビレが黄色、そして尻ビレも淡い黄色だが、地域または個体によって変異がある。体の青も光の当たり具合などで見え方が異なる。
ソラスズメダイ(座間味)
伊豆半島では1年中見られることから、繁殖も行われているようだ。
伊豆半島でも普通に見られる成魚(富戸)
ソラスズメダイはあまりにも普通すぎて、レンズを向けられることはとても少ない。だが繁殖期にはおもしろい生態が見られる。沖縄での繁殖期は初夏から秋。ふだんはオスとメスの区別はつかないが、この時季オスの体色は黒っぽくなる。そして縄張りを持ち、岩の下に巣穴を掘る。小石やサンゴのかけらなど邪魔なものは、くわえて捨てる姿がよく見られる。
サンゴのかけらをくわえた婚姻色のオス。同時に2尾は珍しい(座間味)
巣穴が完成すると、メスにアピールしながら誘うわけだが、なかなか思うようにいかない。何度か失敗した後、誘導に成功。自分が先に入るとメスがついてくる。約1分後、メスが出てきた。産卵を無事終えたのだろう。オスも次のメスを誘うために出てきた。
左は、巣穴にメスを誘導したところ。右は産卵を終えて出てきたメス
ふ化した仔魚は潮に漂いながら、浮遊生活を送る。大部分はプランクトンとして食べられたりするが、黒潮に運ばれて北へ旅立つものもいる。伊豆半島では、秋の初めごろから、ソラスズメダイの若魚が密集している光景が見られる。この中から天敵の目をかいくぐって成長するのはどのくらいいるのだろうか。
密集する全長約4cmのソラスズメダイの若魚(富戸)