大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

好奇心旺盛  ニジハタ

ハタ科のニジハタは全長約25cmの小型種。相模湾以南の太平洋に分布しているが、成魚が普通に見られるのは奄美諸島以南で、主な生息場所はサンゴ礁。体色は赤で、後部は焦げ茶色をしている。尾ビレに白い線が2本あることが最大の特徴。この白線が「二」に見えることから付けられた和名かと思ったが、「虹羽太」と書かれた図鑑もあるので、真意のほどはわからない。

単独で行動するニジハタ(座間味)

 

好奇心旺盛と形容したが、その前提になるのが警戒心が弱いということ。つまりダイバーから逃げないため、いろいろな情報を読み取ることができるのだ。あるとき、バディと二人で岩穴に入って小さな魚を撮影していた。5分も経つと、排気の泡が天井にたまり、水鏡ができた。するとニジハタが来て水面に写る自分の姿に興味津々だった。

水面に写る自分の姿を見るニジハタ。2尾も来た(座間味)

 

警戒心が弱くて好奇心が旺盛でなければ、狭い岩穴には入ってこないし、水面を見る余裕もないはずだ。このニジハタは岩穴から出ても去らなかった。バディとにらめっこをしたのだ。いつまでもそうしていたので、なんとも不思議な体験だった。

にらめっこするニジハタ(座間味)

 

このような性格の魚であれば、他の魚との交流もあるに違いない。そう感じて機会があれば観察したが、一度だけだった。それはクギベラと共に行動し、エサを探していた。動きが速く、すぐに遠ざかってしまったため、結果はわからなかった。ちなみに、ニジハタは興奮すると体色が変化したり、不規則な斑紋が現れる。また、ヘラヤガラと一緒に泳いでいたこともあるが、これは自分の意思とは無関係なので、交流とは違う。

上はクギベラとニジハタ。下がヘラヤガラとニジハタ(共に座間味)

 

好奇心が旺盛な性格は、エサの捕食にもプラスに作用する。常にアンテナを張っていて、チャンスがあればすぐに行動を起こすことができるからだ。それを立証するように、ニジハタが獲物をくわえた場面をよく見る。ハタ類の中では一番で、やはり好奇心がベースにあるからに違いない。

クラカオスズメダイをくわえたニジハタ(奄美