'95年9月、奄美大島の水深約7mで見知らぬスズメダイを撮影した。当時、手元にあった数冊の図鑑には載っていない。実際には『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)に掲載されていたが、標本写真だったために照合できなかったのだ。
オキスズメダイの未成魚
マバラシライトイソギンチャクと幼魚
幼魚はその後奄美で度々見ている。砂地にあるマバラシライトイソギンチャクのそばに、数尾が群がっていることがあるのだ。
オキスズメダイの婚姻色
'05年、やはり奄美でオキスズメダイの成魚に出会った。ポイントからかなり離れた砂地にある小さな岩で、卵の世話をしていた。見事な婚姻色になって求愛している個体も見られた。時期は11月下旬で、夏から繁殖が続いているのだろうと思った。
砂地にあるサンゴに群がる
その後沖合の砂地にある小さな岩やサンゴのところにオキスズメダイが群がっていて、4月から6月まで卵の世話をしていることを知り、たびたび訪れるようになった。その結果、まだ無名のときのアマミホシゾラフグを発見することになる。
ミステリーサークルとアマミホシゾラフグ
オキスズメダイとアマミホシゾラフグの生息場所が同じだった訳だ。アマミホシゾラフグがつくるミステリーサークルは、奄美南部では清水と嘉鉄の2か所で見られるが、オキスズメダイもその2か所でしか見られず、不思議な共通点でもある。この写真の黒いものが、オキスズメダイが群がっているサンゴ。
盆地のような産卵床と卵の世話
卵は石や岩など硬いところに産むが、砂をどかして出てきた小石に産み付ける場合が多い。したがって産卵床は盆地のようになっていることがある。ふ化が終わるとオキスズメダイは去るため、波や流れで産卵床は砂で埋まってしまう。夏の間は繁殖が見られないので、水温が高い時期は中断するのかもしれない。まだまだ謎多き魚だ。