今回のテーマ最後は、生息数が多いナミスズメダイ。生息場所はどちらかというと内湾なので、枝状サンゴが群生している付近でよく見られる。産卵に利用しているもので最も多いのは死サンゴだが、特にこだわりはないようだ。硬いものなら何でもいいらしい。
死サンゴの裏側に産み付けた卵を世話するオス(奄美)
ヤマブキスズメダイと同じクラカオスズメダイ属なので、ヤギ類やムチカラマツ、イソバナ類などの刺胞動物を利用することもある。
ムチカラマツに産み付けた卵を守る(水納島)
あるときオオイソバナに産卵中だった。枯れていない部分に産み付けていたので、不思議に思った。何か特別な処理をして産んだのだろうか。その後オオイソバナを利用した場面は見ていないので、未だに謎のままだ。
オオイソバナに産卵中のペア(座間味)
最も驚いたのは、木の枝を利用していたこと。台風で流れてきた木の枝がサンゴに引っかかっていた。そばに本種がいたので近寄ると、なんと卵が産みつけられていて、その世話をしていた。他にもドラム缶に産み付けてあったことも。このように融通性があることで、今日の繁栄があるのだろう。
木の枝に産み付けた卵を世話する(奄美)
ヤギの仲間の枯れた枝に卵を産み付け、それを守っているオスを見つけたら、そばに幼魚も数尾いた。ふ化後に仔魚は浮遊生活を送るので、実の親子ではない可能性が高いものの、子供の面倒を見ない海水魚では、成魚と幼魚が一緒に暮らすことは珍しい。
ナミスズメダイの成魚、幼魚、卵が一緒に(座間味)