チョウチョウウオ科のミカドチョウチョウウオは、全長約15cmになり、駿河湾以南の西・中部太平洋に分布する。本州~九州での記録はほとんど幼魚で、成魚が見られるのは奄美大島以南。サンゴのポリプを専門に食べるため、サンゴ礁に依存している。
昔、ミカドチョウチョウウオの「ミカド」は「帝」や「御門」、つまり天皇や皇居の門を意味した言葉かと思っていた。高貴な感じのチョウチョウウオに見えたからだが、実際は体高が高く、三角形に見えることで「三角チョウチョウウオ」と付けられたらしい。
サンゴのポリプを食べるミカドチョウ(座間味)
ミカドチョウの日本での生息数は多くない。基本的にはペアで行動しているようだが、奄美や沖縄で出会ったものは単独だったことからも、生息数が少ないことがうかがえる。サンゴに依存しているため、諸々の影響でサンゴが死滅すると、共に姿を消す運命にある。
約8cmのミカドチョウの未成魚(奄美)
ミカドチョウの近縁種にトライアンギュラー・バタフライフィッシュがいる。分布はインド洋で、和名はない。トライアンギュラーは三角形という意味で、ちなみにミカドチョウの英名はイースタン・トライアンギュラー・バタフライフィッシュという。習性などはミカドチョウチョウウオと同じで、相違点は本種の尾ビレ前部に黄色の縁取りがあること。
モルディブでトライアンギュラーの幼魚を見つけて撮影したが、尾ビレ付近の色はまだ完全ではないようで、ミカドチョウにも見える。幼魚期はまぎらわしい。
約2.5cmのトライアンギュラー・バタフライの幼魚(モルディブ)