10年前の出来事といえば、何といっても東日本大震災。だが、自分の中ではもう一つある。10年前の5月25日は、ミステリーサークルをつくるフグを発見した記念日なのだ。当日朝、女性スタッフKとお客1名の計3名でボートに乗り出港。予定のポイントは他のボートが停まっていたため、清水(せいすい)に変更したことも幸いした。
沖に続く斜面の際に設置されている目印
この時季なら、沖に生息するオキスズメダイの繁殖が狙える。また、1年前ミステリーサークルがあったので、見られる可能性が高い。スタッフはビギナーのお客に付き添うので、ぼくは先に向かった。
観察・撮影予定だったオキスズメダイと住みか(10年2月撮影)
沖の砂地は水深25~27m。かなり進むとミステリーサークルがあった(A)。写真を撮って移動すると、またミステリーサークルを見つけた(B)。オキスズメダイから約3m離れたところだ。
ミステリーサークルB(5/25)
撮影していると、突然小さなフグがやって来た(写真左)。くわえていたサンゴのかけらをサークルの中央に落とし、今度はサークルの溝に体を置いてヒレを動かし始めた(写真右)。溝を掘ったのだ。信じられなかったが、夢中で撮影した。
後のアマミホシゾラフグ。世界で最初の画像(5/25)
ワイドレンズで、フグがミステリーサークルの中で砂をならす行動も撮影した。
Bのミステリーサークルとフグ。後方がオキスズメダイの住みか(5/25)
帰り際にAを見たが、フグはいなかった。他のサークルもフグが関与していることを立証したいと思い、3日後見に行く。Aのサークルはフグはいなかったものの、見事に完成していた。今考えると、産卵は早朝なので、メスが来なかったようだ。Bのサークルは産卵を終えたらしく、フグが卵の世話をする行動をとっていた。
完成していたAのミステリーサークル(5/28)
その後、台風2号の接近で海に出られず。一旦東京に戻ってから6月下旬に行き、観察・撮影した。どのサークルもフグが関与し、産卵床として利用することが判明したので、NHKの自然番組に企画を提案。翌年『ダーウィンが来た!』の取材を行い、12年9月に放映して世界中で話題になった。このフグは2014年に新種記載され、アマミホシゾラフグと命名された。
フグの発見から10年経った今も問い合わせは多く、先日もカナダから写真の依頼があった。特に子供向け、学生向けの本や教科書などに掲載されるケースが多い。奄美大島は西表島などと共に、世界自然遺産に登録されることが確定したので、これからさらに注目されることだろう。
今年4月に発行された「少年写真ニュース」4月28日号