大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

イソギンチャクの四季折々

奄美大島南部の代表的なダイビングポイントは、嘉鉄(かてつ)。砂地に根がいくつかあり、魚も多い。少し離れた砂地の水深約13mに、マバラシライトイソギンチャクがある。長い触手がカーブしているのが特徴。このイソギンチャクにはクマノミやトウアカクマノミが共生する。しかしトウアカクマノミの北限は沖縄本島。ここで発見すれば分布が変わるので、機会があれば観察・撮影している。

マバラシライトイソギンチャクとクマノミ165月)

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ここのマバラシライトイソギンチャクには、クマノミの幼魚、ミツボシクロスズメダイの幼魚の他にオキスズメダイの幼魚も隠れ家として利用している。その他にクリーニングシュリンプもいることがある。しかし、時季によって大きく異なる。真冬は姿がまったく見えない。

生きものがまったくいない。水温は20℃だった(112月)

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地上では春真っ盛りでも、海の中は2か月くらい遅れてくる。イソギンチャクの触手の中にクマノミの幼魚が1尾、外にミツボシクロスズメダイの幼魚が1尾だけいた。

春になっても水の中はまだまだ(144月)

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海の中の状況はその年によっても違いがあるうえ、魚類の繁殖状況も異なるので何ともいえないが、初夏になっても大きな変化は感じられない。クマノミ幼魚が若干増えた。

ややクマノミが増えた程度(176月)

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幼魚たちがたくさん居つくのは、どうやら秋のようだ。どこで繁殖したかで異なるが、初夏から夏に繁殖。卵からふ化して浮遊生活を送り、それを終えてイソギンチャクにたどり着く。1月ごろから少しずつ減少するが、おそらく成長して生活圏が変わるからだろう。

無数のミツボシクロスズメダイ幼魚(1610月、白枠は0912月)

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クリーニングシュリンプのカクレエビの仲間がいるお陰で、いろいろな魚がクりーニング目当てでやって来る。このときはタスジフグが待っていた。このフグは2016年に新種記載されたばかりで、奄美では2個体確認している。

砂地にポツンとあるイソギンチャクでも、さまざまなドラマが隠されている。

クリーニングを待っていたタスジフグ(154月)

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