キンメモドキの群れは、誰もが魅力的に思える被写体だと思う。ハタンポ科キンメモドキ属のキンメモドキは、ハタンポ属より体高が低いため、近縁とは思えない。全長約7cmで、千葉県以南の太平洋、インド洋に分布している。体の色は幼魚期は半透明だが、成長に伴って顔は黄色味を帯び、体はピンクがかった肌色になる。とはいえ、光の当たり具合で複雑に変化する。
キンメモドキ(座間味)
キンメモドキは夜行性で、昼間は根などの陰で群れている。サンゴ礁域では年中見られるが、春ごろに幼魚が居つくようになり、6月から7月にかけて爆発的に増え、根 を覆いつくすほどになる。
根を覆うほど増えたキンメモドキ(奄美)
たくさん増えると当然捕食者もやって来る。カスミアジなどの回遊魚がほとんどで、根に住むハタ類などはなぜか食べない。ただ、ミノカサゴが狙っている姿は見ることがある。
本種が居つく根には、他にスカシテンジクダイやクロホシイシモチの幼魚などが混泳することもある。スカシテンジクダイは背ビレが二つ(本種は一つ)あること、群れの外側あるいは上方に浮遊する傾向があるので区別できる。
キンメモドキの群れ。白枠内はスカシテンジクダイ(座間味)
本種の群れにホンソメワケベラが近寄ると、そばにいるものは口を開けてクリーニングを要求する。しかし落ち着いて行われることはないので撮影は困難。あるときアカシマシラヒゲエビのそばに本種が近寄ったので、しばらく粘った。そしてようやくクリーニングシーンが撮れた。
アカシマシラヒゲエビのクリーニング(座間味)
本種は根からほとんど離れず逃げないので、誰でも撮れる。しかも排気の泡や音で驚き、群れの形を次々に変えてくれるので、飽きることはない。しかし、ハレーションを起こしやすい体だったり、他の生物や背景などとの兼ね合いもあって、傑作を撮るのは難しい。まぁ、どこで妥協するかだが…。
群れの形を次々変えるキンメモドキ(奄美)