大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ボス的存在・アザハタ

ハタ科のアザハタは紀伊半島以南の太平洋、インド洋に分布している。全長は約50cmで、体色は赤。しかし、感情によってすぐ変化させる。ダイビング雑誌によく出ているので、すぐに出会える印象があるが、意外に少ない。生息環境のせいかもしれない。アザハタが好むのは、砂地やガレ場にあるやや深い根なのだ。
水深24mの根に住むアザハタ(座間味)

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根にはキンメモドキやスカシテンジクダイなどの小魚が群れるほか、クリーニングを行うエビもいて、一つの社会が出来上がっている。その中でアザハタはボス的存在で、小魚を狙う魚がやって来ると追い払う。当然エビなどにクリーニングをされることも多い。
アカシマシラヒゲエビのクリーニングを受ける(西表)

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生息場所の周囲は砂地の場合が多く、潮の流れやうねりで根が埋もれてしまうこともある。アザハタが時折砂地に横たわって砂煙を上げることがあるが、埋もれるのを防いでいると考えられている。
横になって砂を舞い上げる(座間味)

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生息数が少ないといったが、その証拠に奄美の南部に27年通っているが、一度も見たことがないのだ。好む生息場所がないのだろう。奄美の北部の奄美空港近くのポイントで出会ったのが唯一。
奄美北部のポイントのアザハタ(奄美

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ボス的存在のアザハタが、釣りやモリで突かれて姿を消すと、大抵その根には小魚もクリーナーも徐々にいなくなり、やがて廃墟になる。そのような運命を辿ったところをいくつか知っている。座間味の24mの根もダメになった一つだ。ところで、成魚は真っ赤な体色だが、幼魚は黒い体に尾ビレの先端が白。幼魚を知ったのは25年前の水納島で、あまりの違いにショックを受けたのを今でも覚えている。
約8cmのアザハタの幼魚(柏島

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