大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

絶好の被写体 ユカタハタ

ハタ科のユカタハタは全長約40cmになり、伊豆半島以南の太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域ではお馴染みのハタで、鮮やかな赤に無数の青い斑点があり、とても美しい。比較的生息数が多いうえに大きさも手ごろで、警戒心もあまりないためよい被写体になる。

ホンソメワケベラにクリーニングされるユカタハタ(座間味)

 

幼魚期の最初のころ(約5cm)の体色は明るいオレンジ色で、青い斑点はまだない。67cmくらいになると現れてきて本種らしくなる。

全長約5cmの幼魚(座間味)

 

ユカタハタは、1尾のオスと複数のメスからなるハレムを形成する。図鑑にはメスの数が最大12尾と記してあるが、沖縄や奄美では砂地やガレ場にある根に生息していることが多いため、23尾の場合がほとんど。外見ではオス、メスがわからないので、じゃれ合っていても遊びなのか求愛なのかわかりにくい。

体を摺り寄せ合うユカタハタ(座間味)

 

被写体として惹かれるのは美しい体色だけではない。絵になる底生生物を撮影しているときに本種が近くにいた場合、この位置に来てくれ、と念じると大抵希望の位置に来てくれる。

リュウキュウイソバナの絶妙な位置に来たユカタハタ(スミラン諸島)

 

生息している根には岩穴があり、クリーニングシュリンプも住んでいる。したがって、暇さえあればクリーニングを受ける。その際も静かに待っていればリラックスした姿を見せてくれる。

ミカヅキコモンエビとホンソメワケベラ幼魚のWでクリーニング(奄美

 

好奇心も強く、常に生息域を見回り、何かがあるとすぐに対応する。特にウツボ類には異常なほどで、必ずちょっかいを出す。そんな性格もあり、お陰でおもしろい写真が撮れる。

サビウツボの若魚にちょっかいを出すユカタハタ(座間味)