大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

行動は派手・カガミチョウチョウウオ

チョウチョウウオ科のカガミチョウチョウウオは、全長約12cmで同科では小型の部類に入る。相模湾琉球列島、台湾、南シナ海、フィリピンに分布する。そのため英名はアジアンバタフライフィッシュという。体色は白に黒い帯のような斑紋が3本で、チョウチョウウオ類ではかなり地味。しかし行動は派手なので、観察しがいがある。

カガミチョウチョウウオのペア(奄美

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本種は単独かペアで行動している。なぜか奄美に多い。あるとき、全長約6cmの若魚が、やはり若魚のマルクチヒメジと寄り添って泳いでいた。ヒメジがヒゲで岩の隙間などを探るので、おこぼれが得やすいのだろう。観察している間、ずっと行動を共にしていた。

マルクチヒメジと併泳(奄美

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カガミチョウチョウウオ同士が争っている場面に出くわしたことがある。争いの場合、縄張りや異性をめぐってが多いが、このときはこの2個体のみだったので、縄張り争いだったようだ。追いかけ合ったり、交差する体勢でぐるぐる回ったり、とても激しく長時間続き、追いかけ合いながら遠ざかった。

めまぐるしい縄張り争い(奄美

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本種は、図鑑によると小型藻類、サンゴのポリプ、小型甲殻類をエサにしている。ある年の6月、スズメダイ類の卵を食べているところに出会った。もちろん卵は栄養価が高いので、どの魚も大好きだ。

スズメダイ類の卵をついばむ(奄美

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チョウチョウウオ類は雑種がよく見られる。本種とアミメチョウチョウウオの場合もかなり多い。その証拠に両種が一緒にいるケースをよく見かける。アミメチョウは奄美付近が北限なので生息数が少ない。したがって近縁の本種を繁殖相手として選ぶのだろう。

本種のペアにつきまとうアミメチョウチョウウオ奄美

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本種とアミメチョウがペア(?)になって行動している(写真左)こともたびたび観察するし、写真右のように、雑種と本種のペア(?)も何度か目撃している。雑種は繁殖能力がないとされるが、突然変異で繁殖もありうるだろう。世界にチョウチョウウオ科は122種もいるので、雑種から昇格(?)したものもいるに違いない。

近縁のアミメチョウチョウウオおよび雑種と(奄美

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