大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

SDGs的な暮らしをする魚

今年からだろうか、SDGs(持続可能な開発目標)関連のテレビ番組が目立つようになった。SDGsは、2015年に国連で採択され、国際社会は団結して2030年を目指してこの目標を達成しよう、と合意した。目標は人権、平和、気候変動、自然保護、エネルギー、ジェンダーなど17ある。

海の中にもSDGs的な暮らしをしている魚がいる。まずは「農業する魚」といわれる、藻食性のクロソラスズメダイだ。生息場所に藻類を繁茂させ、食用にする以外は他の藻食性魚類から守る。そのため、この藻類はクロソラスズメがいない所では見られず、「共生」していることになる。

藻場をつくって守るクロソラスズメダイ(座間味)

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目標2の「飢餓をゼロに」と14の「海の豊かさを守ろう」にふさわしいのがカタクチイワシ。この小魚は、他の魚のエサとして存在しているといっても過言ではない。爆発的な繁殖力のお陰で、絶滅せずに今でも1年中見られ、人間もよく利用する。しらすやちりめん、煮干などもイワシ類の稚魚。特にしらす干しなどは年中スーパーにあるので、もう少し漁獲量を抑えてもいいと思う。

食用に生まれてきたようなカタクチイワシ(真鶴)

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目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」にふさわしいのがヤイトヤッコ。メスからオスに性転換する種で、写真の個体はメスからオスになりかけている。どちらの性にするかは、繁殖成功率を考えなければならない。この場所ではメスが少ないので、オスになってもハレムをつくるのは難しい。それを知ったのか、この個体はメスに戻った。

外見はオスになりかけたヤイトヤッコのメス(奄美

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目標211「住み続けられるまちづくり」と14に当てはまるのがオヤビッチャだ。自分では守り切れない範囲に産卵するため、卵の1/4くらいは他の魚に食べられてしまう。繁殖期は410月と長いうえに毎回なので、学習してもよさそうだが…。他の魚に協力している、と解釈するしかない。

他の魚に卵を与えているようなオヤビッチャ(コモド)

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目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」にピッタリなのが、マルクチヒメジとシロタスキベラの併泳。互いに協力して小魚などのエサを捕らえる。

目標達成に協力するマルクチヒメジとシロタスキベラ(座間味)

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