チョウチョウウオ類のほとんどはペアで行動している。ごく一部のチョウチョウウオを除いて。ごく一部とはカスミチョウチョウウオのこと。豊富に流れてくるプランクトンが主食なので、争う必要がない。
通常はペアで暮らしているのに、あるとき群れるチョウチョウウオ類がいる。ハクテンカタギもそうだ。サンゴのポリプを専門に食べるハクテンカタギは、群れになってハナヤサイサンゴに向かっていた。このサンゴには縄張り意識が強いイシガキスズメダイなどが生息するため、ペアでは簡単に追い払われてしまうからだ。
サンゴに群がるハクテンカタギ(タヒチ・ランギロア)
日本には少ないツキチョウチョウウオ。タイのタオ島ではかなり多く、しかも時期になると群れるという。その実態を探るために訪れた。ペア同士が出会うと通常ならケンカが始まるのだが、それはない。そのうち別のペアが次々に集まり、一斉にどこかへ向かう。理由は定かではないが、シャッフルして別の相手を選ぶように見えた。
ユウゼンは日本固有種で、伊豆諸島や小笠原諸島に多い。4~5月にユウゼン玉と呼ばれる群れが見られる。群れは移動しながら海底の岩肌をつついてエサを食べ、また移動を繰り返す。何を食べているのか調べたら、キホシスズメダイの卵だった。このスズメダイは他の魚より早めに繁殖するため、狙われたようだ。やはり群れるほうが効率よく食べられることを学習したのだろう。
インド洋に生息するコラーレバタフライフィッシュ。このチョウチョウウオはモルディブで初めて見たのだが、いつもペアだった。ところが、プーケットやスミラン諸島では小さな群れをよく作っていた。大抵は群れる理由をある程度推測できるのだが、本種はまるでわからない。エサをとるわけでもなく、のんびり漂っていたり、ゆっくり移動するだけ。このチョウチョウウオが群れるのは、井戸端会議のようなものなのかもしれない。