ニザダイ科ヒレナガハギ属のゴマハギは、全長約20cmになる。駿河湾以南の西部太平洋、インド洋に分布し、成魚は主にサンゴ礁域に生息している。体色は茶色で、後部が徐々に黒くなる。背・尻ビレが大きいことが同属の特徴。岩肌の藻類を主食にしている。同属のキイロハギとは体色以外に明瞭な差がないため、同種とする意見もあるが、形質的なわずかな差に加え、分布様式の違いから現在は別種になっている。分布様式とは、ハワイではキイロハギのみでゴマハギは分布せず、サモアではこの逆ということ。
ゴマハギとキイロハギ(奄美)
ゴマハギは地味だが、それは成魚だけ。幼魚期はきれいなので、観賞魚として人気がある。サンゴ礁域では枝状サンゴの間にいることが多い。黒潮の影響で温帯域にも出現する。
全長約3cmの幼魚。5~6cmから成魚に近い体色になる(座間味)
通常成魚は単独かペアで行動している。ごく稀に群れるらしいが、おそらく産卵のときだろうと思っていた。ところが、座間味で12月に群れているのに出会った。産卵行動とは思えないし、群れるのを始めて見たのでちょっと興奮した。
群れで行動するゴマハギ(座間味)
奄美ではゴマハギとキイロハギがよく一緒に行動している。最初の写真もそうだが、これはまた別のとき。この個体はやけに黄色味が強い。以前も黄色味が強いタイプに出会っているので、よくいるのだろう。黄色味が強いタイプは、もしかしたらゴマハギとキイロハギの雑種ではないだろうか。
キイロハギと黄色味が強いゴマハギ(奄美)
奄美や座間味でキイロハギを撮影したことがあるが、黄色味が鮮やかなのが特徴だ。その一方でやや濁りのある黄色いタイプのハギもいる。この写真もそうだ。「魚類写真資料データベース」でゴマハギやキイロハギを検索すると、両種ともバリエーション豊かで、どちらに入れても差し支えないような写真もある。写真と撮影地で判別しているので、そのようなことになるようだ。
ということで、ゴマハギはまだまだ研究の余地がある魚といえる。
黄色味が強いゴマハギ? それともキイロハギ?(奄美)