大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

サンゴを見れば環境がわかる

浅い海で見られるサンゴは、骨格が硬いのでイシサンゴという。また、成長して礁をつくるため、造礁サンゴともいう。サンゴ礁とは、生物がつくった構造物(地形)のこと。サンゴ礁が発達する条件は、①水温が18.5℃以下にならないこと。②太陽光が届く水深40m未満であること。③水が澄んでいること、など。日本でこれらを満たすのは、トカラ列島以南になる。

条件が揃って発達したサンゴ礁(石垣)

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サンゴは生息環境によって形が異なる。したがって、サンゴを見ればどんな環境なのかがわかる。この写真は、背が低いテーブル状サンゴばかりで枝状サンゴはないため、強い波がある時季だけ当たる、と推測できる。一年中波が当たるとサンゴ自体育たず、岩肌がもっと見えるはず。ここは座間味島の北側のポイント。冬は季節風が吹き、それ以外は静かなのでサンゴは海底にへばりつくように育つ。

背が低いテーブル状サンゴ(座間味)

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枝状サンゴが高く伸びている場合は、一年中穏やかで潮の流れもほとんどない入江になる。このように背が高いサンゴは、大波が来れば折れてしまうので、波静かな環境ということがわかる。

長く伸びたミドリイシ科の枝状サンゴ(奄美

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サンゴ礁の大部分は、成長が速いミドリイシ科のサンゴで占められている。サンゴを食い荒らすことで知られるオニヒトデの大好物は、ミドリイシ類。このためオニヒトデの大発生は、海のバランスを取る役割、と考えることもできる。潮の流れが適度にある海域には、いろいろなサンゴが生育する。

適度な潮流がテーブル状や枝状サンゴを育てる(座間味)

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特殊な例がこれ。水深約14mの海底に大きなテーブル状サンゴが群生している。やや深いので波の影響はほとんどない。とすれば枝状サンゴがあってもよいのだが…。ここは島に挟まれた海峡で、潮の流れが強くなる。そのため枝状サンゴは固着できない。テーブル状サンゴが成長できるギリギリの潮の強さなのだろう。もっと強ければ、岩肌だけになってしまう。

群生する大きめのテーブル状サンゴ(座間味)

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浅い海で樽型のサンゴを見ることがある。礁地(ラグーン)といわれる、リーフの内側の穏やかな海域で、ハマサンゴやアオサンゴの場合が多い。上部は水面ギリギリで、死滅して平らになっている。海水がなければ成長できない証でもある。こうした形状のサンゴは、微小な環礁に見立てて、マイクロアトールと呼ぶ。

ちょっとした環境の違いでもサンゴは形を変えたり、さまざまな対応で生命を繋いでいて実に逞しい。

アオサンゴのマイクロアトール(石垣・白保)

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