大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

軽石漂着で分布の謎解明!?

1015日、大量の軽石奄美大島の海岸に漂着した、とのニュースがあった。小笠原諸島南硫黄島近くの海底火山・福徳岡ノ場813日の噴火によって噴出した大量の軽石が、2か月かけて奄美群島沖縄本島に流れ着いたのだ。このことにより、今まで不思議に思っていたことが、納得できた。

軽石が流れ着いた奄美市名瀬小湊海岸(NHK NEWS WEBより)

f:id:youjiuo:20211019103234j:plain

 

というのは、これまで奄美で何度も小笠原ゆかりの魚を見つけたからだ。奄美黒潮が近くを流れているため、魚類などは沖縄やフィリピン、インドネシアの影響を強く受ける。一方小笠原は、マリアナ諸島マーシャル諸島ポリネシアなど中央太平洋の影響が強い。それにもかかわらず、日本では小笠原だけしか確認されていない魚が奄美に出現することがあるので、不思議に思っていた。例えばヨスジニセモチノウオは、97年2月に小笠原で得られた標本を基に日本初記録になったが、すでに奄美でも生息していた。

日本では小笠原でしか記録がないヨスジニセモチノウオ(9611月)

f:id:youjiuo:20211019103355j:plain

 

メイキュウサザナミハギも小笠原から得られた標本を基に日本初記録になった。この写真は幼魚で、成魚は小笠原と西表で確認されている。

メイキュウサザナミハギの幼魚(9711月)

f:id:youjiuo:20211019104254j:plain

 

ヨコシマニセモチノウオはマーシャル諸島から得られた標本を基に新種記載された。日本では小笠原の標本で004月に日本初記録種となり、和名が付けられた。その後久米島宮古島西表島でも生息が確認されている。奄美では95年に外洋のポイントに幼魚が出現し、4年後同ポイントで成魚が出現した。もしかしたら同一個体かもしれない。

ヨコシマニセモチノウオの幼魚(左、956月)と成魚(9911月)

f:id:youjiuo:20211019104358j:plain

 

ベニオチョウチョウウオは、マリアナ諸島タヒチなど中央太平洋に広く分布している。日本では小笠原に比較的多いが、沖縄では見られない。奄美では90年代中ごろから2個体が居ついていた。この現象も不思議だったが、いつしか(10数年前)姿を消してしまった。

ベニオチョウチョウウオ9711月)

f:id:youjiuo:20211019104515j:plain

 

スミツキソメワケベラも日本での生息は小笠原のみだったが、92年に座間味島で発見。その5年後に奄美でも見つけた。奄美では少し離れたところにもう1個体いた。たぶん現在も日本での生息確認はこの3か所だと思う。

これまで小笠原ゆかりの魚が奄美に出現しても、偶発的な出来事と捉えていた。しかし、不思議でもなんでもないと、長旅を終えた軽石が教えてくれた。

スミツキソメワケベラ(9711月)

f:id:youjiuo:20211019104617j:plain