数多いイソギンチャクの中で、砂底で見られるのがスナイソギンチャク。ウメボシイソギンチャク科に属し、太めの触手が48本ある。本数は決まっているようだ。長さは20cmくらいで、それぞれが艶めかしく動く様は、見ていて飽きない。また、色彩変異も豊富なことが知られている。触手には刺胞毒があり、魚を刺してエサにするともいわれている。魚はそれを知っているためか、近寄らない。ある時を除いて。
白っぽいスナイソギンチャク(大瀬崎)
スナイソギンチャクは、奄美や沖縄などのサンゴ礁域では見た覚えがない。温帯域特有のイソギンチャクなのだろうか。
茶色いタイプのスナイソギンチャク(大瀬崎)
黄緑のタイプもある。海中では妖しく輝いて見えるが、写真に撮るとそのような感じには写らない。
黄緑のタイプ(大瀬崎)
縞模様が入っているものもある。このスナイソギンチャクにはたくさんのカクレエビが住んでいた。エビは殻があるものの、イソギンチャクの刺胞毒は防げないらしい。そのため、住み始めたときにイソギンチャクの粘液に触れ、免疫をつけるとのこと。その後も触手にはできるだけ触れないように浮遊したり、根元にいることが多い。
縞模様がある個体(錦江湾)
最初にスナイソギンチャクに魅了されたのが、このピンクの個体だった。海の中にこんな美しい色の生物が存在すること自体、不思議に思い、何度も撮影した。惹かれたもう一つの理由は、エビが住んでいたこと。通常魚は近寄らないのだが、このエビがクリーニングを行うのでやって来る。魚は触手に触れないようにエビを待ち、クリーニングされるとうっとりする。こんな珍しい生態を教えてくれたのがスナイソギンチャクだったのだ。
ピンクの個体とヨソギをクリーニングするエビ(79年、赤根)