大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

心に残る取材(1)

会社勤めを辞め、フリーの写真家になったのは19819月。以来、40年以上いろいろな仕事をしてきた。好景気に支えられた部分もあるが、好きなことに熱中できたことも大きいようだ。徐々に記憶が薄れてきているので、消えてしまう前に今でも印象に残っている仕事、特に依頼された取材を年代順に取り上げてみたい。

❶映画「しのぶの明日」水中撮影

198311月、映画の水中撮影を依頼された。紺野美沙子主演の「しのぶの明日」で、彼女演ずる老舗そば屋の娘・しのぶは、彼と八丈島へ行ってダイビングを楽しむ。その帰りに交通事故で失明する。将来を悲観したしのぶだが、盲導犬と共に明日という日に向かって生き抜いていく姿を描いた物語。映画は35㎜フィルムでの撮影だが、水中はカメラの関係で16㎜フィルムになった。ロケ隊と八丈島で合流したものの、波が高いため、港で代役を使って撮影した。

しのぶの明日のポスターと、紺野美沙子、北詰友樹

 

機関誌「はれ予報」水中撮影

19851月、しんきんVISAグループ発行の機関誌「はれ予報」の巻頭ページで、水中撮影を趣味にしている吉嶺全二氏を取り上げるので撮影を依頼された。編集者と沖縄在住の吉嶺氏を訪ね、その後ボートを置いてる北部の安田(あだ)に行き、沖に出て撮影した。

カメラの準備をする吉嶺氏と、はれ予報のページ

 

テレビ番組「ウォッチング」出演

19878月、NHK沖縄のディテクターから、「ウォッチング」の話があった。この番組は、動物の生態に詳しい専門家をウォッチャーとし、フィールドでの行動を取材してそのVTRをスタジオで司会者のタモリと見ながら話をするというもの。このときはホンソメワケベラを選び、NHK沖縄と福岡のスタッフ5名とで座間味に行って取材し、後日、東京でスタジオ収録した。海とは違い、かなり緊張したのを覚えている。

「ウォッチング」のタイトル、司会のタモリ

 

テレビ番組「日本動物記」制作協力

1988年春、NHK沖縄のディレクターより、夏休みの特別番組制作に協力してほしいと連絡が。「ウォッチング」が好評だったので、同じスタッフでとのこと。そこで4年間撮影している、トウアカクマノミを提案。そして定点カメラの必要性を強調し、導入された。6月に座間味で取材し、産卵からふ化までと、他の魚類の繁殖シーンを撮ることができた。水中での定点カメラは今回初で、その後さらに進化することとなった。

日本動物記のタイトルと定点カメラ

 

❺「2年の学習」歯みがきフィッシュ大発見!

1988年秋に学研の「2年の学習」副編集長から、6月号で「歯みがきフィッシュ」の特集を組みたい。ホンソメワケベラがダイバーの口に触れるシーンが撮れるか?の問い合わせがあった。撮れると答えたものの、モデルは編集部の記者で、ダイバーではないとのこと。人気記者の体験ページなのだ。場所を座間味に決め、1月に向かった。最初はレギュレーターをはずす訓練。4秒くらいだったものが徐々に長くなり、5日目には約30秒に。悪戦苦闘した末に、ようやく思いどおりのものが撮れた。

ホンソメワケベラが歯を掃除する瞬間