80年代中ごろから、水中写真やフィッシュウォッチング(FW)を楽しむダイバーが増えてきた。86年に東海大学出版会から出された『フィッシュウォッチング』(林 公義著)の後押しもあったのだろう。ただ、この本では、ダイバーが魚を観察している写真がほとんどない。そこで、もっとわかりやすい写真が今後求められると予測し、撮ることにした。
オオイソバナにまぎれるヘラヤガラを見るSさん(座間味)
それまでは、ダイバーが餌付けしている写真が多かったが、観察が目的となると魚に近寄る技術に長けたモデルが必要になる。あるパーティーで知り合ったプロの水中モデルのSさんに頼んだところ、ノーギャラにもかかわらず快く引き受けてくれた。1週間、座間味で撮影した。さすがはプロ、ダイビングも魚への接し方も申し分ない。
ハマクマノミを観察する
根のすき間にサザナミヤッコがいたので、反対側から顔を出すように指示した。サザナミヤッコはゆっくり出てきて、その後ろにSさんが顔をのぞかせた。うまいタイミングで撮れたが、このときSさんはスーツを着てなかった。岩や生物に触れずに、指示どおりにこなしたSさんに感心したのを覚えている。
サザナミヤッコとすき間のSさん
いろいろな魚を見つけてはそれなりの写真を撮ったが、リラックスも必要と思って遊びの時間も取り入れた。そんなとき、ジュズべりヒトデを拾い、マスクに張り付けた。何ともほっこりする写真になった。
マスクにヒトデ
この時代は1日2DIVEが標準だったので、空いた時間はスノーケリングで撮影した。
スノーケリングも上手だった
ニシハマというポイントは、ホンソメワケベラが比較的多く、ダイバーに絡んでくる。マスクにもまとわりついてくるので、Sさんの視線を重視してシャッターを押した。こちらの意図や趣旨をしっかり把握してくれたSさんのお陰で、フィッシュウォッチング用のよい写真がたくさん撮れたのだった。
まとわりつくホンソメワケベラ